<阪神1-0ヤクルト>◇20日◇甲子園

 デカした小嶋!あっぱれ小嶋!くすぶり続けた阪神の7年目左腕小嶋達也投手(27)が、大きな白星をもたらした。サヨナラ勝利翌日は11年以来7連敗中で、今季カード2戦目は未勝利だったが、6回までノーヒットの快投で、負のデータを一掃。自身にとっても、7回1安打無失点で2年ぶりのうれしい勝利だ。チームは3連勝で貯金2。この勢いで和田阪神初の4連勝いったるで!

 見渡した景色に、小嶋の声が思わず上ずった。本拠初勝利したルーキーイヤーの07年4月15日以来の光景だ。6年ぶりの甲子園お立ち台で絶叫した。

 「やっぱりすごい、良い気持ちですね。長かったです。またこういうふうに戻ってこられて、本当によかったです」。

 ヒーローインタビューではスタンドを埋め尽くしたファンに圧倒されがちだったが、マウンドでは堂々のピッチングだった。最速142キロの直球に、100キロ台のスローカーブを交え、時には大胆に、時には丁寧に攻めた。6回を終わっても被安打は0。もしかしたらノーヒットノーラン…。ちらつき始めた快挙は、7回に崩れた。先頭のバレンティンに左前に運ばれた。それでも「打たれたとはいえ、まさか(ノーヒットノーラン)できるとは思ってなかったので、気にせずにいけたと思います」。無心で左腕を振り続けた。2死一、二塁で代打岩村。ひるまず緩いカーブを投げ込み、一ゴロに仕留めた。一塁ベースカバーでボールをつかむと、ガッツポーズ。感情を解き放った。

 背水だった。「長い間結果がずっと出ていなかった。今日もダメだったら次もないのかな」。岩田の不調で巡ってきたチャンス。「1イニング1イニングを投げきることだけを考えていました」。11年10月13日の横浜戦(横浜)以来、白星から遠ざかっていた。06年希望枠で入団した左腕も、もう7年目。腹を据えた。試合前、バッテリーを組む同い年の小宮山と話した。お互いに今季初先発だった。「思い切って、やったろうや。信用していくから」。前回勝利時も組んだコンビで勝利をつかんだ。

 快投の裏には変化もあった。「打者が嫌がるピッチャーになることを意識しすぎるな。シンプルに考えろ」。久保2軍投手コーチに言われ、インステップしていた投球時の右足の踏みだし位置を、本塁に向けて真っすぐ出すようにした。課題だった制球に安定感が出た。この日は4四球だったが、コースを狙い勝負した結果。四球の後も崩れず、後続を断った。大阪ガスの先輩であり、同じ左腕の能見からも技を盗んだ。「すごい参考になる方が近くにいる。いいところを吸収したい」。登板試合を録画映像などでチェック。落ちる球はチェンジアップだけだったが、今季からは能見に助言を求め、フォークも取り入れた。

 サヨナラ勝利の次戦は11年7月14日以来7連敗中だった。加えて今季、カード2戦目は1度も勝ててなかった。波に乗りきれなかった和田阪神を象徴する2つの呪縛を、伏兵左腕が解いてみせた。チームは今季2度目の3連勝。貯金は今季初の2。大きな白星をもたらした左腕は、自らの道も切り開いた。【山本大地】

 ◆小嶋達也(こじま・たつや)1985年(昭60)10月7日、大阪市生まれ。大隅東小2年から野球を始め、高校は石川・遊学館へ野球部1期生で進学。2年夏に甲子園8強、3年夏は3回戦敗退。大阪ガスから06年希望枠で入団。1年目の07年、初登板初先発だった4月1日広島戦(京セラドーム大阪)で初勝利。昨年は4試合、5回1/3の登板。通算51試合4勝8敗。家族は夫人と2女。181センチ、79キロ。左投げ左打ち。