日本ハム陽岱鋼外野手(26)が球団史上初めて「最多盗塁」のタイトルを獲得した。13日にパ・リーグの全日程が終了。自身シーズン最多47盗塁をマークして6日に公式戦を終えていたが、プロ入り初タイトルが確定した。日本ハムは前身の東映などを含めて12球団で唯一、盗塁王を輩出していなかったがピリオドを打った。

 両リーグ合わせても断トツの47盗塁を決めた陽岱鋼の左足には、無数の傷が残る。膝も真っすぐには伸びない。「去年までは自分の能力に半信半疑だったけど、今は違う」。8割以上の高い成功率を誇る安定感は、故障を恐れない勇気と、プロ入り後に習得した技術、そして自信の結晶だ。

 「スライディングは誰にも負けない自信がある」と胸を張る。「お尻を地面につくと、手もつくことが多い。スピードが落ちるし、塁審の心証も悪い」。だから、加速したまま左足から一気にベースへ滑り込む。故障と隣り合わせの方法だが、それが快足を生かす自分のスタイルだと自負する。

 台湾から、兄の背中を追って野球留学した。言葉の壁にぶつかった高校時代。「あいうえお」からのスタートだった。敬語が理解できず、上級生とのもめ事も絶えなかったが「お兄ちゃんから日本の文化に合わせないとダメと言われて、今はその大切さが理解できる」。今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で台湾代表の主力として活躍するなど母国ではスター選手だ。台中スポーツ文化の架け橋となる韋駄天(いだてん)は「シーズン途中から狙っていた。絶対に取るんだと自分にプレッシャーをかけ続けた結果」と、8年目で初めて手にした勲章を喜んだ。【中島宙恵】