<西武2-3日本ハム>◇4月30日◇西武ドーム

 日本ハム大谷翔平投手(19)が得点圏での勝負強さを発揮した。西武戦(西武ドーム)に今季初の5番で先発出場し2安打2打点。4回1死二塁で先制の中越え適時二塁打を放つと、6回1死三塁から右前適時打で2点目をたたき出した。規定打席数未満だが得点圏打率は驚異の5割2分9厘。チームの連敗を4で止める原動力となった。

 大仕事にも平然だった。大谷が存在感を示す2打点に「あまり点数も取れていなかったですし、流れ的にも良かったです」と涼しく自己分析した。4回1死二塁から先制の適時二塁打。「結果オーライ」と流したが、強烈な弾道で中堅手の頭上を抜いた。6回1死三塁では右前打。最初の適時打はフォークボールを待ちながら速球を捉え、2本目は直球待ちでカーブを拾ったという。好機での打席で対応力の高さが際だった。

 今季初の5番。7回2死二塁では敬遠気味の四球で勝負を避けられた。力と技、オーラでも圧倒し、中軸の役割を果たした。

 前例ない挑戦は続く。前回登板4月27日ロッテ戦でプロ入り初の中6日で登板。2年目の今季。野手で出場しながら開幕から約1カ月で理想の二刀流に近づいた。投手では既に2勝。打者でも魅力を放っても、いまだ賛否の声が渦巻く。夢かなった1つの初対面が、心を折らず突き進むパワー源。春季キャンプ中だった。あこがれの人に強く、優しく背中を押された。

 野茂英雄氏(45)。近年、隆盛の日本人の大リーグへの道を切り開いた。パイオニアが沖縄・名護を訪問した。数球団を視察した中で1番目に日本ハムを選んだ。大谷に一目会うためだったという。二刀流の推進者。公の場を好まないがグラウンドまで姿を現し、大谷と故意に接点を持った。球団関係者によれば、大投手は熱い伝言を残したという。「誰もやったことがないこと、やった方がいい。できることなら自分も(二刀流を)やりたかった」。

 胸にしまいながら戦う、2人で秘めた金言。至宝を預かる栗山監督も、野茂氏からこう説かれたという。「まだ19歳。才能があるんだから認めてあげたらいかがですか。もっとワガママも認めてあげたらいいんじゃないですか」。停滞の危機が叫ばれるプロ野球に夢を運ぶ使命と資格、自覚がある。この日、孤軍奮闘で連敗を4で止めた。「まぁ、まぁ…。良く打ったよ」。得点源として打順3番から路線変更で賭けた指揮官も、嘆息の働きをした。大谷が一瞬、一瞬の勝負を制していく先に未来が待つ。引き継いでもらったパイオニアの称号と系譜。もっと遠くに、本当の大勝負がある。【高山通史】

 ▼大谷が4回に先制打、6回に中押し打を放った。先制打、同点打などの殊勲安打は今季6本目。規定打席未満ながら内川(ソ)と並ぶリーグ2位タイに浮上した。昨季から得点圏打率は3割2分5厘と好機に強かったが、今季は同5割2分9厘とさらに勝負強さを増している。2年目の今季通算打率は3割9分2厘に浮上。規定打席到達は難しそうだが、二刀流の先輩である永淵洋三(近鉄)は野手に専念したプロ2年目の69年、打率3割3分3厘で張本(東映)と並んで首位打者を獲得している。