ゴジラを超える怪物だ!

 阪神掛布雅之DC(59)が24日、鳴尾浜を訪れて高卒2年目横田慎太郎外野手(19)の打撃を褒めちぎった。室内でのマシン打撃で、元巨人松井秀喜のプロ2年目と比べて打球音が勝ると大興奮。2軍高知・安芸キャンプスタートが決定している横田だが、掛布DCの耳はゴジラ級大砲に大化けする予報を聞いた。

 密室で響く打球音が、ミスタータイガースの興奮を誘った。掛布DCは午後1時、茶色のハットにピンクのマフラーとラフな装いで鳴尾浜に現れた。1月中の技術指導は選手会との取り決めで禁止されている。オフ特有の緩い空気を吹き飛ばす快音がとどろいた。

 掛布DC

 横田の調子がいいよね。音がいい。2年目の松井以上だよ。いい音鳴らせてたね。まあ室内ではあるけれど。

 思わず「ゴジラ」と比べ、にっこりと笑った。それほどまでに、1年間ファームで指導してきた横田が大きな成長を遂げていた。打撃を確認するのは昨年11月以来。入団時から約9キロ増量した体重94キロの体から鋭い打球を打ち続けていた。掛布DCは野球評論家や解説者として89年から活動。自身のファンであり、鳴り物入りで巨人入りした松井の打撃も間近で見てきた。松井はプロ2年目の94年に20本塁打と飛躍し、メジャーリーガーへの土台を完成させた。それを超える打球音に出会ったのだ。

 一方、打ち終えた横田にも手応えがあった。

 横田

 これまでは3球連続で思い通りに打てていたのが、今は5、6、7球と続くようになった。

 粗削りの状態で、1年目のウエスタン・リーグでは79試合で6本塁打、23打点。2軍首脳陣はそろって「練習し続ける才能がある」と言う。体力測定でもチーム内で屈指の数値をたたき出すパワーに、木製バットや環境への慣れが加わり、化学反応が起きた。

 室内練習場に居合わせた福留も「変わりましたね」とうなずく。決してお世辞ではない掛布DCの言葉を伝え聞いても、満足することを知らない男は「そんな、そんな。マシン相手なんで」と謙遜した。その姿勢こそが著しい進化の源だ。前日23日には2軍の高知・安芸キャンプスタートが決まった。それでも行き着く先を知らない成長曲線は、プロ2年目での1軍デビューを期待させる。

 以前から和田監督が「素晴らしいものを持っている」と実力を認めていた。今春のテーマは「若手の底上げ」。ゴジラ級のポテンシャルを秘めた逸材が、安芸で牙を研ぐ。【松本航】

 ◆横田慎太郎(よこた・しんたろう)1995年(平7)6月9日、東京都生まれ。鹿児島実から13年ドラフト2位で阪神入団。1年目の昨季、8月3日オリックス戦でのウエスタン・リーグ1号が満塁本塁打。同31日中日戦では1試合3本塁打。昨秋の安芸キャンプでは広角に柵越えを連発した。昨オフ、30歳未満の選手を対象にした体力測定では背筋力や垂直跳びなど3項目でトップを記録した。

 ◆松井のプロ1、2年目

 巨人1年目の93年には開幕1軍こそ逃したものの、5月1日ヤクルト戦に「7番・左翼」で先発し1軍戦初出場。翌2日の同カードでは高津からプロ1号。シーズン終盤には3番に定着し、現在も高卒新人セ・リーグ最多の11本塁打を放った。2年目の94年には広島との開幕戦、シーズン初打席で北別府から本塁打。4回にも1発を放った。初の全130試合出場を果たし、日本一にも貢献した。

 ◆掛布と松井

 同じ右投げ左打ちの強打者とあり、松井は星稜在学中から好きな選手として掛布を挙げていた。入学当初は一塁手ながら途中で掛布と同じ三塁手へ転向し大喜びしたという。巨人入団後の98年には、左翼にも本塁打を量産した掛布の現役時を意識し広角打法にも取り組んだ。