昨年オフに年俸闘争を繰り広げた西武涌井秀章投手(25)が今年は一転、FA選手を除くとチーム一番乗りでサインした。25日、西武ドームで契約交渉を行い、4300万円ダウンの2億1000万円プラス出来高で更改。年俸調停で大幅アップを勝ちとって臨んだ今季は9勝に終わり「とんでもないシーズンだった」と球団提示を素直に受け入れた。今オフ予定していた右ひじ手術を回避する意向で、来季開幕投手を力で奪う決意を示した。(金額は推定)

 増額を求めて闘った昨年オフの姿はなかった。一挙19人が契約更改したこの日、涌井は朝一番で交渉に臨んだ。プロ7年目で初のダウン提示に「結構いかれました。調停もしたのに、年俸に成績が見合わなかった。やっぱりお金のことでもめるのはよくない。来年しっかり取り戻そうという気持ちで、最初に契約してもらった」と出直しの意味を込めた一発サインだった。

 昨年オフは契約交渉で折り合わず、年俸調停に発展。現状維持の球団提示2億2000万円から、3300万円アップを勝ちとった。有無を言わさぬ活躍が求められた今季は9勝止まり。5年続けた2ケタ勝利も逃し、2億1000万円のダウン提示を黙って受け入れた。「1軍に定着して初めてケガで抹消され、不調で2軍降格もあった。初めて思い通りに投げられなかった悔しいシーズン。1月の最後まで交渉が続いて、練習が本当に集中してやれたかどうか」と契約のゴタゴタが招いた影響を、自戒をこめて振り返った。

 鈴木球団本部長は「当然ダウン。エースとしての自覚をどう思ってるか」と厳しい言葉で奮起を促した。減俸分を取り戻せる出来高をつけた涌井は、来季に向け「ソフトバンクと今年はそんなに対戦機会がなかった。打たれるイメージはない。来年はいっぱい投げて勝ちたい」。本来なら“指定席”の開幕投手も、来季は渡辺監督が白紙を強調したが「開幕だけは譲れない」と言い切った。オフは自主トレに集中できる。無念はすべて来季のマウンドにぶつける。【柴田猛夫】