<東都大学野球:亜大4-0東洋大>◇9日◇第6週初日◇神宮

 亜大・東浜巨投手(4年=沖縄尚学)がリーグ史上12人目となる通算30勝、主な大学リーグでは単独トップとなる20度目の完封を成し遂げた。最速は143キロ止まりも観察眼と制球力に優れた投球で、これまで通算1勝7敗と苦手にしていた東洋大を散発3安打に抑えて初めて完封した。

 丁寧な投球を続けていた東浜が、突如制球を乱した。8回2死から今季初の連続与四球。20の大台に乗せる完封を「意識したくなかったけど、してしまった。完封したら記録だなと」。マウンドに向かった生田監督が間を取ると、冷静さを取り戻した。次打者を二ゴロに打ち取り、ピンチを脱した。

 全球をセットポジションで投げた。最速143キロと球速は控えめにし、8回を除けば制球が抜群だった。直球、ツーシーム、スライダー、チェンジアップを両サイドに投げ分けた。「調子は前回よりはよかった。終盤は投げ急いだりちょっとばらついたけど、全部のボールが平均的にまとまっていた」と今季初めて笑顔を見せて振り返った。12球団が集合したプロのスカウト陣からも、制球力を評価する声が相次いだ。

 30勝はリーグ史上12人目の快挙だが、趣味の1つに人間観察を挙げるほどの観察眼が生きている。打席での打者の立ち位置はもちろん、ネクストバッターズサークルにいる打者にまで目を配る。8回まで先頭打者をすべて打ち取ったが、高校時代からバッテリーを組む捕手の嶺井は「1球目を投げる前から打者を観察している」と証言する。

 私生活から「小さいゴミを拾ってきたり。何を考えているのかも当てられる」と嶺井。この日は6つの空振り三振のうち、3つが高めのボール球を振らせたもの。打者の打ち気をうまく利用した。東浜はサイン交換で何度も首を振るが、高いレベルの制球力と観察眼が相互作用するため、自ら投球を組み立てられる。

 大学入学時に目標に掲げた30勝に到達し、次なる狙いは1つ。「東洋大戦と中大戦は大事。しっかり勝ち点を取りたい」と、亜大では03年以来となる秋春連覇に絞った。【斎藤直樹】