<東京6大学野球:慶大8-6早大>◇最終週最終日◇1日◇神宮

 慶大が、涙、涙の逆転優勝を飾った。1回に4失点する劣勢の中、逆転で早大を破り、勝ち点4として、6季ぶり34度目の優勝を決めた。膵臓(すいぞう)疾患で入院中の竹内秀夫監督(59)に代わり、監督代行を務めた江藤省三助監督(72)の下で一致団結。同点の6回には「ヨシノブ2世」谷田成吾外野手(3年=慶応)が左翼席に決勝ソロを放った。大学日本一をかけて、全日本大学野球選手権(10日開幕、神宮ほか)に出場する。

 戻ってきた神宮球場で、江藤助監督が3度、宙に舞った。早慶戦という最高の舞台で優勝を決めた。「ほっとした。今回は特別な気持ちです」。竹内監督のこと、選手のこと。過去2回とは異なる優勝の光景に自然と涙があふれた。

 本来、見るはずのない景色だった。昨季限りで監督を退任し、元プロ選手の学生野球資格回復を行い、付属校の「総監督」として念願の高校野球を指導するはずだった。ところが、今年2月に竹内監督が膵臓疾患の手術を受けることになり指揮官が不在になった。「選手が困っていると聞けば断るわけにはいかない」と、自らの夢をいったん封印しグラウンドへ戻った。

 あの日から約3カ月。選手も思いにこたえた。手塩にかけて育てたクリーンアップが大一番で爆発した。「(高橋)由伸2世」こと3番谷田は6回に勝ち越しソロ。4点ビハインドの2回には、4番の横尾俊建内野手(3年=日大三)が右前打し、5番の藤本知輝外野手(4年=慶応)が2ランを放った。勝負のシーズンへ、甘党の藤本はスイーツ断ちし10キロ減量した。「2年の秋に4番も打たせてくれて、調子が悪くても使ってくれた。恩返しがしたかった」と打撃戦を制した。

 ベンチに飾られた竹内監督の「背番号30」も後押しした。江藤助監督は「昨年まで(自身が監督で)竹内君に助監督をやってもらった。今回は私が恩返しをする番だと思った」と感慨に浸った。長男の竹内惇内野手は3安打1打点。打のヒーローに育て上げた。助監督は6月いっぱいで退く予定だが、その前に全日本大学野球選手権がある。「6大学の代表として日本一を狙いたい」と意気込んだ。竹内監督は来週にも退院予定。最後の大仕事をやり遂げ、最高の形でバトンを渡すつもりだ。【和田美保】