ファン感謝イベントで「アップル対決」が実現する?

 西武ドラフト3位の富士大・外崎(とのさき)修汰内野手(21)が4日、岩手・花巻市内の同大で指名あいさつを受けた。実家は青森・弘前市にあるリンゴ農園で、同じく祖父母が群馬・沼田市でリンゴ農園を営む同1位、前橋育英・高橋光成投手(17)の存在を強く意識。渡辺久信シニアディレクター(SD=49)から、「2人でファン感でリンゴを売るのはどう?」と番外マッチを提案された。

 リンゴが取り持つ縁に表情が緩んだ。ガチガチに緊張した硬い表情で指名あいさつを受けた外崎だったが、渡辺SDから「外崎家と高橋家のリンゴを売れればと考えている」とのリップサービスに、「(収穫で)忙しい時期ですが…すぐに両親に連絡します」と満面の笑みを浮かべた。

 即戦力内野手は外崎農園の4代目跡取りとして生まれた。リンゴ生産量日本一の青森県の中でも、弘前市は特に生産量が多い名産地。実家の農園は野球場1個分ほどの敷地を持ち、「ふじ」を中心に数種類を出荷している。

 しかし「大好きな野球をやりたい」という息子のため、両親は家計が苦しい時期も借金を背負いながら、たった1つのグラブを持たせた。野球の道を閉ざすことのなかった家族に外崎は、「結果を残してプロ入りし、実家のために稼いで恩返ししたい」と言い続けてきた。

 ファン感謝イベントは西武ドームをメーンに11月23日に開催される。収穫最盛期に当たり、即売会が催されれば「新鮮で間違いなくおいしいリンゴです」と胸を張る。幼少期から1個約400グラムのリンゴが詰まった箱を抱えて腕っぷしを鍛えてきた。水沢スカウトも「何より丈夫な体が魅力でパワーがある」と評価する。

 同じく母方の実家がリンゴ農園を営むドラフト1位の高橋とは、ポジション争いこそないが、「指名順位は僕の方が下。リンゴを売るなら弘前は本場ですから、そこは」と味比べ対決で譲るつもりはない。オフには家業を手伝うこともあり、「家計のためになると思う。ありがたいし、負けられない」と意気込んだ。ファン感で「外崎リンゴ」を売り込み、自身の知名度もブレークさせる。【成田光季】

 ◆外崎修汰(とのさき・しゅうた)1992年(平4)12月20日、青森県弘前市生まれ。小学4年から桔梗野ボンバーズで野球を始める。弘前実では甲子園出場なし。富士大では4年秋に首位打者。177センチ、75キロ。右投げ右打ち。家族は両親、弟、祖母。血液型O。

 ◆実家が農家の主なプロ野球選手

 兵庫出身の乾(日本ハム)の実家は米や野菜をつくる兼業農家。静岡出身の浦野(日本ハム)の実家はお茶農家で幼少期は茶摘みの手伝いも経験した。和歌山出身の筒香(DeNA)はビニールハウスの中に設置した打撃マシンで練習を積んだことで知られる。千葉出身の長嶋終身名誉監督(巨人)や鹿児島出身で通算213勝の北別府(広島)ら名選手も多く、通算251勝の東尾(西武)は和歌山のミカン農家で有名だ。