セ・リーグの新人王に輝いた巨人松本哲也外野手(25)が球団史に残る大幅アップを勝ち取った。1日、東京・大手町の球団事務所で契約更改交渉に臨み、2400万円増の3000万円でサインした。年俸が前年の5倍以上になるのは上原(99年)と条辺(01年)に続き球団史上3人目で、野手では初めてとなる。月給20万円からはい上がった育成の星は、大幅増を励みにさらなる飛躍を誓った。(金額は推定)

 サインを終えた松本は、まだ夢の中にいるような表情で会見場のいすに腰を下ろした。提示された金額は、今年の給料のちょうど5倍にあたる3000万円。「まだ実感がわかないです。何を買おうとか、まったく考えてない。これから実感がわいてくると思いますけど…」。月給にすれば250万円。巨人のレギュラークラスでは平均にも満たない数字でも、06年に月給20万円、年俸240万円の育成選手として入団した松本にとっては重みが違った。

 飛躍の3年目だった。中堅のレギュラーとして129試合に出場。「てんびん打法」と呼ばれる独特のフォームで、打率2割9分3厘をマークし新人王に選ばれた。広い守備範囲と体を張ったダイビングキャッチで育成出身選手初のゴールデングラブ賞にも輝いた。「育成からはい上がってきたことを評価してもらった」。今年の働きに満足することなく「規定打席に到達しての打率3割。それから盗塁王にも加われるようにしたい」とさらなる成長を誓った。

 来季、12球団で最も厳しい巨人の外野争いはさらに激しさを増す。ドラフト1位の長野や復活を目指す高橋由が、目の色を変えて松本のポジションを奪いに来る。「今年の成績は関係ない。オフにしっかり体を作って、キャンプ初日からアピールして競争に勝ちたい」。背番号が「64」から「31」に変わることも正式に決まった。空いている中から原監督が選んだもので、ONの永久欠番を組み合わせた数字は大きな期待の表れでもある。

 プロ野球選手は、活躍によって環境が大きく変わっていく。だが、給料の使い道について聞かれた松本は、少し考えてから照れくさそうに言った。「とりあえず貯金しようかと思います」。1球たりとも無駄にしない、常に全力で野球に取り組むまっすぐな姿勢はこれからも変わらない。【広瀬雷太】