“ダル詣で”に御利益あり。侍ジャパンのダルビッシュ有投手(36)が宮崎強化合宿2日目の18日、初めてブルペン入りした。

3種類のスライダーやツーシーム、フォークなど多彩な変化球を交えて35球投げ込んだ。捕手の後ろでは佐々木や山本ら後輩侍がズラリ。熱視線を送られながらも、1球1球弾道測定機「トラックマン」の数字を確認しながら、黙々と投球するメジャー式ブルペンで調整。次の段階となる実戦形式のライブBPへ視界は良好だ。

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誰もがそわそわしていた。ダルビッシュが今強化合宿で初めてブルペンに入る。約1時間も前から報道陣が席を次々に確保して、ぎっしり100人強が集結した。ついに主役が到着すると、一挙手一投足をカメラに納め、メモを取る。注目度と期待の高さは後輩侍たちにとっても同じだった。受けた甲斐の後ろには、2年連続MVPの山本や完全試合を達成した佐々木ら日本球界を代表する投手たちでさえ、初めてプロ野球選手を見た野球少年のように目を輝かせて見守った。

高橋奎と大勢は30分前から捕手の真後ろを陣取り、佐々木は記録として残すため、自らのスマホで動画を撮影。高橋宏はあえて横から見つめ、栗林はラスト3球にかけこんだ。戸郷、宮城も「エグい」「すげー」と大興奮。それでも最年長右腕は動じない。「メンタルは自分でコントロールできる状況なので、人はいましたけど自分の世界を作って集中するようにしていました」と不動心を強調。「でもうれしかった」と素直に喜んだ。

ダルビッシュたるゆえんが詰まった初ブルペンだった。球速や回転軸、回転数を確認する「トラックマン」のデータ確認用のiPadをプレートの近くに置き、1球1球を確認。メジャー式のルーティンで、自身の主観的な感覚を客観的な数字と照らし合わせた。多彩な変化球も全球種が別格。3種類のスライダーにツーシームもキレキレ。鋭く落ちるカーブやフォークも交えた。日本ハム時代から知る厚沢投手コーチは「教科書みたいな人が目の前で見られるんだから、みんな見たいでしょうね」と絶賛した。

規定により壮行試合での登板はできないが、先発が有力視される1次ラウンド第2戦の韓国戦へ向け調整段階を上げる。「次は実戦になると思う。ライブBPに投げてから、体調次第でブルペンだったり、ライブBPのスケジュール、球数を決めていく」と明かした。ランチでは宮崎特産の肉巻きおにぎりをほおばり、帰り際には約10分間、ファンにサインを書き続ける神対応。週末のサンマリンの中心にダルビッシュがいた。【小早川宗一郎】

▽栗山監督 想像通り。1つ1つのボールの精度が高い。スピン量が出てると思うけど、それが見なくても分かる感じ。本当に素晴らしい。

▽山本 本当にすごいと思いました。みんなすごいですけど、久しぶりに…なんて言うんでしょう…見ていて、楽しかったです。スライダーはテレビで見ても、すごい曲がっていたけど、あの角度から見ても、すごいとしか言えないです。

▽佐々木 どの変化球もすごかったなと。記録として(携帯で)撮りました。いろいろ投げ分けていてすごい。マネできるか分からないけど、自分に足りないところを聞けたら。

▽戸郷 えげつなかったですね。やばかったっすね!興奮しましたよ。真っすぐもスライダーもフォークもツーシームも一級品。なかなかこんな機会ないのでうれしかったです。

▽大勢 僕は先に来てて、気づいたらみんな集まってました。ああやって後ろで見る機会がなかなかないので、得られるものがあればと思いましたけど、次元が違いました。ツーシームが見たことないくらい曲がってました。

▽宮城 すごいです。ダルビッシュさんから教えてもらったことも(ブルペンで)やりました。だんだんよくなってきてると思います。

▽高橋奎 別格だなと後ろから見て思いました。真っすぐの(上に)吹く感じは憧れる。エグいすね…!

▽伊藤(ダルビッシュの隣で投球) 自分が夢をもらった存在の横でソワソワしながら投げていた。普通に見たかったけど(右から)横目で見ているからこそ、全部のボールが同じところを通っているように見える。すごいなと思います。

▽今永(ダルビッシュと同タイミングでブルペン入り) なんで一緒のタイミングでブルペンに入ったんだろうって…。自分が投げている時以外はダルビッシュさんのボールばっかり見てたので、自分のブルペンのボールはあんまり覚えてない(笑い)。

▽高橋宏 左打者のインハイに投げるスライダーとインローに投げるスライダーは軌道が違いましたし、そこに投げ分けられる精度は自分には到底ない。新しい発見になりました。

▽湯浅 すごいっす。スライダーがめちゃめちゃ曲がってて、昨日、スライダーの握りを教えてもらって今日投げたんですけど、けっこういい感じで投げられました。

▽栗林 3球くらいしか見られなかったけど、ホームが近いなと感じました。

○…ダルビッシュの投球を初めて受けた甲斐拓也捕手は「どの球も素晴らしいです」と、感銘を受けた。最も印象的だったのは「ツーシーム。いろんなピッチャーが投げますけど、これがツーシームなんだとびっくりした」と、衝撃を受けた。投球後には構えやキャッチングなどの修正ポイントを逆質問。ダルビッシュから「変えるところはないよ」と言われるなど、バッテリーとしてのコミュニケーションも深めた。

○…松井裕樹投手が痛恨の見逃しを悔しがった。ダルビッシュのブルペン投球中、球場内でトレーニングをしており「見られてないんですよ。投内連係の流れでランニングやトレーニングを球場でやってて見られなかったです。投げるのは知ってたけど、タイミングあわず…。残念です」と吐露した。19日には2度目のブルペン入りでWBC使用球への対応を進める。