「投げる哲学者」が最後の実戦調整を終えた。

侍ジャパンの今永昇太投手(29=DeNA)が、チーム3戦目となる壮行試合の「カーネクスト侍ジャパンシリーズ」中日戦に先発。3回を3安打1四球で1失点にまとめ、最速153キロの直球を軸に7三振を奪った。

上々の内容で、複数イニングを任される「第2先発」の準備を整えた。だが、2番手の戸郷が2失点、3番手の松井裕は4失点。投手陣は計7失点と不安も残し、実戦初黒星を喫した。

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WBC開幕へ向けて、今永がギアを上げた。初回に投じた直球は12球全てが150キロを超えた。初回に右前打を許した細川だが、151キロでバットをへし折った。変化球とのコンビネーションにも生きて初回の4番ビシエドから3回の8番龍空まで5者連続三振。2回は3者連続三振を決めた。「2回は無欲で投げられた。そういう時はいい投球が出来る」。あらためて、自分の長所も実感できたマウンドだった。

課題が出ても“投げる哲学者”に問題はない。力強かった真っすぐは、力みすぎると制球を乱した。「そこは修正しないと。出力を出そうとすると、メカニズムにエラーが出る」と自己分析。変化球はスライダーやツーシームなどを、しっかりとコントロールして「心配はない」。直球の精度については「次はどうすれば、ビジョンは見えている」と言い切った。

今永が見据えるビジョンとは-。「自信満々で大会に臨むより、少しの不安を持って大会に臨んで、それを試合前に払拭(ふっしょく)する」。自分の力を過信せず、マウンドに上がれば、無心で打者を圧倒しにいく。この日は初回と3回で悪癖が出たが、この日の2回が成功体験の好サンプル。最後まで修正ポイントと向き合いながら、最高のパフォーマンスが出せるメンタルを整え、あとは本番での出番を待つだけだ。

WBCでは先発投手の次に投げる第2先発としての起用が予定されている。この日の投球内容から、さらに上積みをして臨めば、十分に結果を残せる準備は整ってきた。「僕の場合は体に何の問題もなければ、気持ちよく投げられる」と、あとは心技体をきっちりと仕上げるだけ。貴重な侍の左腕が、頼もしい姿を見せて、調整登板を終えた。【木下大輔】

▽日本吉井投手コーチ (今永は)秋の強化試合もよかったが、あの真っすぐは世界で通用する。先発の可能性もあるので、1回やっておいてもらった。(松井は)今日はちょっとボールを気にしてバッターと勝負できていなかった。残りの時間でしっかり調整してもらいたい。そんなに練習では悪くないので、ほんのもう少しのところでアジャストできると思う。