WBC準々決勝を終えて19打数7安打、打率3割6分8厘と好成績を残す侍ジャパンのラーズ・ヌートバー外野手(25)。世界一を目指し、1番打者としてチームを引っ張る切り込み隊長の打撃フォームを、日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(52)が分析した。

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ピッチャーが投球動作に入る前から、(1)では打ちにいく準備ができている。バットを肩の上に乗せているのは、両腕の力を抜くためで、右足の踵を浮かせているのも、始動で立ち遅れないようにするためだろう。

ここから(2)で右足を内側に絞るように上げ、わずかだが左ヒジの先端を浮かせるように左脇を空けながらタイミングを計っている。この時、(2)から(4)で少し右肩が内側に入るのが気になるが、バットの角度も変わっていないし、グリップの位置も背中側に入り過ぎていない。

そのため、右肩が内側に入ってもグリップは背中側ではなく捕手方向に引けている。だから右足を踏み込んでいくときにグリップが捕手側に残るように使え、大きな「割れ」が作れる。つま先で着地した右スパイクとグリップの距離が長く、(4)のトップの形は素晴らしい。体の左サイドが器用に動かせない右投げ左打ちの打者では珍しいほど見事な形ができている。

(5)でも右スパイクのつま先を開いたまま踏み込めている。つま先がこの角度で踏み込めると、頭が前に突っ込みにくくなるし、スムーズな軸回転が可能。上半身も左肘から動かして打ちにいけている。ここまでは利き腕ではない左腕をとても上手に使えている。

少し残念なのは、せっかく左肘から動かせているのに、(6)で左肘が下に落ちすぎているところ。打った球は外角寄りのストレートで、センター前に低いライナーではじき返すヒットだった。結果は見事だが、左肘が落ちすぎずに体の前に入ってくるように使えれば、もっと外角ギリギリや低めのコースでも対応ができるし、広角に打てて確実性は上がると思う。

左肘が体の前に入ってこないため、(7)→(8)では右腕も伸ばしたままでしか使えない。そのため、グリップの位置が体の前に入りにくくなり、バットのヘッドが返りやすい状態になってしまう。それでも(8)では上半身を後方にスエーするように使ってバットを振るスペースを作れ、球との距離を作れている。だから(9)でも頭を後方に残したままインパクトゾーンでバットのヘッドを返さずに使える。ヌートバーならではの技術でカバーしている。

(10)と(11)では少し慌てて走り出そうとしすぎている。侍ジャパンのトップバッターを任されているだけに仕方ない面もあるが、もっと焦らずに体を回転させて打てれば長打が増えると思う。

ガッツあふれるプレースタイルで、侍ジャパンの勝利にも大貢献した。性格も良さそうだし、今後メジャーに帰っても応援を続けたい選手のひとり。ただ、メジャーの外野手といえば、とてつもないパワーヒッターが多い。それらの選手に負けないで、頑張ってほしい。機会があれば、日本球界でのプレーも期待したい!(日刊スポーツ評論家)