侍ジャパン吉田正尚外野手(29)がベストナインに輝いた。

決勝こそ無安打だったが、大会史上最多13打点をマーク。準々決勝イタリア戦からは4番も任され、打線の中心で世界一をけん引した。「みんなと世界一を分かち合える、本当に幸せだと思います」。かみしめるように言った。

どれだけ打っても「たまたまです」と言う。ただ、準決勝メキシコ戦の同点3ランには確信があった。滞空時間が長い右翼ポール際の当たり。スタンドのファン、ベンチのチームメートはファウルかもしれないと、静かに見守っていた。

試合後、関係者にさらりと伝えた。「アレは入るでしょ」。NPB通算133発の男の手は、その感触を覚えている。どの角度、勢いなら入るのか-。世界一を奪還した試合後にも「運がよかっただけ」と多くは語らない。チームを勝利に導く一打を打てれば、それでいい。

メジャー移籍1年目。何度も聞かれた。大丈夫なのか、と。「世界一をとりたい。日の丸の重みも、もちろん感じていましたので」。だから背負った。故障のリスク、レッドソックスを離れるリスク。1人だけの体じゃないことも承知の上でWBCに参加し、そして打ちまくった。

「今年はやっぱり世界一とワールドチャンピオンが目標なので」。その世界一はとった。「次は1年間大きなケガせず、ワールドシリーズに出場して優勝すること。その一員になれたらいい」。ボストンで暴れ回っている姿しか、今は想像できない。【中野椋】