侍ジャパン千賀滉大投手(24)が、5回を1安打無失点で抑える好投で先発の役目を果たした。80球の球数制限がある中で5回を63球で投げきり、リリーフ陣にバトンを渡した。今大会で先発投手が無失点に抑えたのは初めて。12日オランダ戦での中継ぎ登板から中2日、小久保裕紀監督(45)の先発起用に見事に応えた。

 千賀はつりそうな左足を必死に踏み出し、無心で腕を振った。準決勝進出をかけた重圧をはねのけ、今大会の先発投手の中で初の無失点投球。チームを6連勝での2次ラウンド1位突破へと導いた。

 「出来すぎです。とにかくゼロに抑えることを必死に心がけた。6回も行けと言われたが、前の回からふくらはぎがつりそうになっていたので、失点するよりも代わったほうがいいと思った」

 得点圏に走者を許したのは3回だけ。150キロ超の浮き上がる速球と縦スライダー、そして落差の大きな通称「お化けフォーク」で狙い球を絞らせず、フルスイングしてくる巨体のイスラエル打線を前に、低めを徹底した。80球の球数制限がある中で63球で5回を投げきった。今大会3試合に投げて計9回無失点。直球とフォークが国際大会で有効だと読んだベンチの作戦が当たった。小久保監督は「5回までよく投げてくれた」と、目を細めた。

 千賀自身も信じられない代表選出だった。10年育成ドラフト4位でソフトバンクに入団した当時の最速は140キロ台前半。新人合同自主トレでキャッチボールをした際は、同期入団した野手の柳田の方が球が速かった。ショックを受け「野手よりも遅い。プロの世界でやっていくのは無理だと思った」。そこからはい上がり、昨年プロ6年目で初めて先発ローテ入り。とんとん拍子で侍入りを決め、ついに代表でも先発の座まで登りつめた。

 この日の好投で、次はロサンゼルスで行われる21日(日本時間22日)準決勝で先発を任される可能性も高くなってきた。「負けたら次がないので、抑えられるようにしたい。メジャー中継で見るような打者が次々に出てくると思うので、楽しみながら投げたい」。プロ入り時には想像もつかなかった夢のような舞台。このまま一気に世界一まで上っていく。【福岡吉央】