お騒がせ男はじっとしていられないのだろう。昨年に日本ボクシング連盟会長を辞任した山根明氏がプロボクシングのWYBC(ワールド・ヤマネ・ボクシング・チャンピオンシップ)を旗揚げ。「フリーランスの若い世代にチャンスを与えるのが夢」とのことだ。

世界ヘビー級選手権で、3分3回で延長1回、2ノックダウン制だった。タイ発祥WSCS(ワールド・ストリート・チャンピオン・シップ)世界王者高橋が、ブラジルのWNFC(ワールド・ナックル・チャンピオン・シップ)世界王者ハットに2-0判定勝ちした。500人が集まったそうだが…。

本家の日本プロボクシング協会と日本ボクシングコミッション(JBC)は、先ごろ非ボクシング・イベントの不当性を共同声明で宣言した。最近はRIZINの元5階級制覇王者メイウェザー対キックの那須川天心、AbemaTVによる元3階級王者亀田興毅の天心や未経験者とスペシャルマッチが注目されたことがある。

ボクシングは古代に始まり、公平性、安全性を求めて築いてきた。近年は安全面が重要視される中、素人の殴り合いなど看過できない。何かあれば、影響も危惧され、ファンも奪われかねない事情もある。「もどき」と一緒にされ、比較されては困ると言うことだ。

格闘技はK-1、PRIDEなど栄枯盛衰を繰り返してきた。現在はRIZIN、新生K-1が人気も、依然として国内統一の統括組織がなく、権威と人気の維持が難しいことに変わりはない。

一方でボクシング界は他競技との二刀流で参戦容認の方針を打ち出した。閉鎖的業界から門戸開放への口火と言えるが、これもヘビー級と女子に限ったところにポイントがある。いずれも選手層の薄さというネックがあるからだ。

ヘビー級は09年に日本ランキングを再設置し、13年に藤本が56年ぶりで王座に就いた。ただし、実質活動しているのは1人と言ってもいい。以前にプロレスラーから転向選手もいたが早々に引退した。女子と同様に選手層の薄さから苦肉の策とも言える。

世界的には群雄割拠で盛り上がってきたヘビー級だが、国内に限れば存続も風前のともしびのようにも思える。そんなスキをつくような山根新団体設立だった。継続性にははなはだ疑問が残り、本家への影響があるとは思えない。

その第一人者である藤本は日本と東洋太平洋王座を返上した。K-1から転向時の「日本人として初のヘビー級で世界挑戦」の目標に変わりはないという。実際に挑戦して勝てるかと言えば、厳しい現実がある。しかし、挑戦となれば、日本人として最初で最後かもしれない。なんかモヤモヤする動きに、京太郎の夢を実現させてあげたいと強く思うようになった。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)