立ち合いで変化しまくる力士がいる。東幕下21枚目の水口(35=春日山)は、5割以上の確率で立ち合い変化する。5日目の取組も、2日連続で変化の末に白星。魁盛王の体勢を崩して、主導権を握った。

 真っ向勝負を貫いてきた元関脇若の里の西岩親方も、ファン目線に立って一目置く。部屋も一門も違うが「普通の力士が変化したらブーイング。でも、水口は真っすぐいったらブーイングでしょう。お客さんも水口の変化を見に来てるんです」と、一芸を認めてしまうほどだ。

 本来、立ち合い変化は奇襲策。ひきょうと言われることもあり、水口は「本当はやりたくないんです。でも、変化する方が足への負担が少ないので」と明かす。6年前の秋場所、幕下優勝をかけた一番で右膝を大けが。2場所全休し、今もサポーターが欠かせない。

 当然、相手も変化を警戒するが、それでも勝利につなげてしまう。相手の裏をかく心理戦にも強い。自己最高位は幕下4枚目で、目標は十両昇進。達成すれば、新十両の最高齢記録を1歳以上更新する。「それしかないと思って目指しています」。目標は変化していない。【佐々木一郎】