元ボディービルダーの力士は、第2の人生でも花を咲かせる。

最高位幕下25枚目で元朝鬼神の山端克忠さん(29)は、1月の初場所限りで現役を引退した。7番相撲を終えた千秋楽、都内の高砂部屋に戻ってその日のうちに断髪式を済ませた。「次の道に進むなら早い方がいい。今はワクワクした気持ちしかないですよ」。3年ほど前から描いていたという、パーソナルトレーナー転身に向けて“身支度”も整った。

大産大を1年で中退後にウエートレーニングにのめり込み、ボディービルディングで全国5位の成績を残した。関係者の紹介で高砂部屋に入門し、15年春場所が初土俵。初場所後に大関昇進を果たした御嶽海らと同期だった。

関取には届かなかったが、異彩を放つ存在だった。元ボディービルダーの肩書もあり、他の部屋の関取衆からトレーニング方法などの質問を受けることも多々あったという。長く付け人を務めた大関経験者の朝乃山もその1人。取組直前には“気合入れ”として朝乃山の背中をたたき、赤く腫れた両手の痕はファンの間で「天使の羽」と呼ばれた。

日本相撲協会のガイドラインに違反した朝乃山は、昨年7月の名古屋場所から6場所連続の出場停止処分を受けた。朝乃山の復帰まで残り半年となった中での引退の決断。「朝乃山の復帰まで待とうと思ったけど、自分の道に進もうと思った。やること(付け人としての仕事)は下の子に教えたつもり。これからも(兄弟弟子として)つながりがあるわけですから、寂しいなんてことは全くないですよ」。復帰の過程を陰ながら見守る。

関西を拠点にジムを経営したい夢がある。「まずは地元(兵庫県加西市)に戻ります。おやじや先輩の仕事を手伝いながら資金をためたい。土台を固めてから、大阪なんかにも出てみたい」。これからは元ボディービルダーで、元力士。「面白い経歴でしょ?」。今度は故郷で脚光を浴びる。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)