師匠の言葉が、照ノ富士の重い決断を物語っていた。「そういうこと(休場の申し出)を自分から言ってくる子じゃない。よっぽどきついんじゃないか」。

両膝に古傷を抱え、先場所終盤に痛めた右かかとも完治しないまま臨んだ5日間。2勝目を挙げた3日目の宇良戦で横綱は「優しさが出ちゃう」と、土俵際で相手を負傷させることを嫌う“情”が出てしまったことにも言及していた。強い責任感を持ち合わせる一方で、ケガのつらさを心得ている。

初日の13日には、大分・宇佐市の大横綱双葉山の顕彰施設「里の駅双葉の里」で、照ノ富士の手形お披露目式があった。同市と交流がある白鵬以降の横綱が協力しており、照ノ富士が6人目。同市によると約300人が集まり、地元の子どもたちも約20センチという照ノ富士の手形に手を重ね、式は活況だったという。休場することになったが、同市観光課の担当者は「また相撲を取ってる姿を見せてほしい」と復活を祈った。

1年以上、ほぼ全ての場所で優勝争いに絡み、今場所は痛みを押し、横綱として土俵を務めていた。「本人は休みたくないはずだが、今回はしょうがない」と師匠。復活する姿が待ち望まれる。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)