大相撲の夏巡業で来場者100人にアンケートを取ったところ、相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する「初っ切り」が最も印象に残ったとの声が相次いだ。担当した高田川部屋の三段目恵比寿丸(31)と幕下大野城(26)に話を聞くと、新型コロナ禍という時代を反映した出し物にするべく意見を出し合ったという。ファンの心をつかんで離さない新様式に、2人とも手ごたえを感じていた。

口に含んだ水を相手の顔に吹きかけるパフォーマンスはコロナ前に恒例だったが、今巡業では採用されなかった。代わりに消毒やマスクの着用といった内容を取り入れた。行司に「密です」と言わせて笑いを誘った場面が印象に残ったという恵比寿丸は「お客さんを笑顔にできた」。大野城も「新しく取り入れたネタに反響があった」と声を弾ませた。

新型コロナの影響で20年5月に亡くなった同部屋の勝武士(しょうぶし)さんも初っ切りを務めた。「お客さんに聞こえなきゃ意味がないから、声を張れ」というかつての助言を胸に土俵に上がる。大野城は「初っ切りに対する思いが強かった」と懐かしむ。演目は真新しくなっても、大役を担う力士たちの情熱は変わらない。「遺志を継いで、勝武士さん以上に盛り上げたい」と誓った。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する「初っ切り」を披露する大野城(左)と恵比寿丸(2022年8月撮影)
相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する「初っ切り」を披露する大野城(左)と恵比寿丸(2022年8月撮影)