コロナ禍が落ち着き、今場所からようやく支度部屋取材が解禁された。控室には“情報”が満ちている。出番前にどんな準備をするか。取組後はどのような表情なのか。そして関取と付け人の信頼関係も見える。

注目の新十両、ウクライナ初の関取獅司には頼りになる“通訳”がいる。付け人の三段目・西太司(さいだいじ)。いまだ日本語がおぼつかないのでサポートしているが、「向こうの言葉? 分からないですよ。ちょっとした単語ぐらい」という。それでも、記者の質問が分からないと獅司から手招きされ、西太司は耳元に何かごにょごにょ。そして「気合でした」。本当にそう言ったか真偽は分からない。

「入ってきた時から人なつっこくてかわいくて。弟のような存在でした」と、入門時から自然と世話係になった。会話は通訳機を介することもあるが、ほとんどが雰囲気。ただ、いわゆる「下ネタ」の日本語を冗談で教えようとしたら、獅司は顔を真っ赤に「ダメだよ」と怒ったという。

異国での異文化の生活に優しく寄り添う兄弟子。エンゼルスの大谷翔平も通訳の水原一平さんの存在が大きいはず。西太司も「角界の一平さん」として、獅司を支える。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

獅司(2023年5月31日撮影)
獅司(2023年5月31日撮影)
ウクライナ出身初の関取の獅司は短冊に母国語で願い事を書いた(2023年7月7日撮影)
ウクライナ出身初の関取の獅司は短冊に母国語で願い事を書いた(2023年7月7日撮影)