最古参の幕内力士、佐田の海(38=境川)が「無敵時間」という文字の入った染め抜きを着て、本場所入りしている。

「無敵時間」は、佐田の海を支援する企業名だ。

両者をつないだのは、佐田の海の親友・津野田聡さんによる「どぶ板営業」だった。佐田の海は相撲に真摯(しんし)に向き合ういぶし銀。魅力的な力士なのに「地味で自己発信しない。それなら僕が支援してくれるところを見つけようと思いました」と津野田さん。約3年前、アスリートを支援してくれそうな企業などに、飛び込みでメールを送りまくったという。

いくらメールを送っても、ほとんどは返信すらこない。そんな中、反応があったのが、アパレルを手がけ、eスポーツなどを支援していた「株式会社無敵時間」だった。

無敵時間の笠本賢一さんは「最初は詐欺かと思いました。でも調べてみると、津野田さんのSNSアカウントがあり、佐田の海関がすごい人であることも分かりました。まず3人で会った時、佐田の海関が無敵時間のブランドやコンセプトを調べて、気に入ってくださっていたことがうれしかったです」と話す。

意気投合し、染め抜きのほか、反物やトレーニング用のTシャツを支給するかたちでの支援が決まった。Tシャツには、相撲にアレンジした「時間ニナレバ敵ハ無シ」の文字も入った。

「無敵時間」はもともと、ゲームから派生した言葉。例えば、マリオがスター(☆)を獲得すると、一定時間は無敵になる。転じて、笠本さんはこう定義する。

「現実の誰にも訪れる特別な時間。楽しんでいる時、夢中になっている時、癒やされている時、困難に立ち向かっている時、自分を追い込んでいる時、その人には何者にも負けない無敵時間が流れている」

佐田の海にとって、相撲を取っている時、稽古している時、トレーニングしている時、それぞれがすべて「無敵時間」だった。

佐田の海は言う。

「無敵時間って、すごいいい言葉だと思いました。自分の好きなことに向き合っている時間は、その人にとっての無敵時間。いいな、と。もっと露出して、恩返しをしていきたいんですよ」

佐田の海の夢は、父の番付・小結を超えること。そのために費やしている時間こそ、無敵時間なのかもしれない。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

「無敵時間」の染め抜きで場所入りする佐田の海
「無敵時間」の染め抜きで場所入りする佐田の海