前WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者内山高志(37=ワタナベ)が、29日に中継局だった都内のテレビ東京で会見。気持ち、ケガに衰えもあり、100%を出し切れないとの理由で引退を表明した。

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 亡き父の「遺言」が、プロ人生を支えた。プロ3戦目を控えた05年11月5日。末期がんで入院中の父行男さんを見舞った。目も開けられないほど弱っていた父親は「試合、頑張れよ」と目を見開き、必死に言葉を発した。数時間後、行男さんは息を引き取る。58歳だった。

 エンジニアとして発電所の管理、設計を行う会社に勤務した父は、新潟・柏崎刈羽原発など、現場の安全管理も任されていた。堅実な道を歩んだ父からはプロになることを反対された。父子関係は断絶。ただ、母百代さんによると、プロは反対も、世界王者という大きな目標を掲げた息子のことは応援していたという。

 内山は命日はもちろん、月命日、試合後も墓参りを欠かさなかった。「“試合、頑張れよ”の言葉は裏切りたくなかった。ボクシングで妥協したら、一生、親不孝者だと思って頑張ってきた」。悔いなき引退。父も称賛しているはずだ。【07~08年、12年ボクシング担当=田口潤】