ボクシングWBO世界フライ級3位中谷潤人(22=M・T)の世界初挑戦が決まった。4月4日に東京・後楽園ホールで、同級1位ジーメル・マグラモ(25=フィリピン)との王座決定戦が、14日に都内で発表された。前王者田中恒成(24=畑中)が返上した王座を争う。中卒で米国での単身修行でスタートし、20戦全勝(15KO)でつかんだチャンス。国内で最も期待されるホープが、一家挙げてのサポートに恩返しのベルトを狙う。

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記者会見場の後方から、壇上の中谷を見守る3人の姿があった。両親と弟。待ちに待った世界初挑戦発表に、異例の家族同伴となった。中谷は「家族をずっと振り回し、今はサポートをしてもらっている。このチャンスを一発でとって、少しでもホッとさせたい」と誓った。

実家は三重・東員町でお好み焼き店だった。中谷が中1でボクシングを始めると、父澄人さん(43)は店の隣に手作りでジムを作り、サンドバッグをつるした。中谷はその時には「フライ級の世界王者になる」との目標を張り紙していた。

中卒前には米国での単身修行を決意し、高校進学を勧める両親を熱意で説得した。デビュー1年後の16年には、中谷が住む神奈川・相模原市に引っ越してきた。一家でサポートするためだった。

昨年には中谷がオーナーでトンテキ専門店とん丸をオープンした。四日市市の名物をメインに、弟龍人さん(20)を店長に一家で切り盛りしている。龍人さんはスポーツマッサージも勉強して、兄の体調維持にも協力する。家族への恩返しには世界王者は必須だ。

世界ランクは4団体すべて1ケタで、今日本で最も期待される。全日本新人王、日本ユース、日本王座、元世界王者戦と確実にステップを踏み、20個の白星を積み上げてきた。「やっと舞台に立てる。世界で一番強い男の肩書ができる試合。わくわくする」と目を輝かせた。

1月には米国で1カ月あまりスパーリング合宿した。前WBAスーパー&IBF世界スーパーバンタム級王者ローマン(米国)と40回手合わせし「いろいろ試して通用した」と手応えも得た。18日から熱海で走り込み、3月に米2次合宿で、決戦へ万全の準備をする。【河合香】

◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)1998年(平10)1月2日、三重・東員町生まれ。米国で修行を積みながらアマ14勝2敗。15年4月にプロデビューで1回TKO勝ち。16年に全日本フライ級新人王、17年に日本同級ユース王座、19年2月に日本同級王座を獲得した。171センチの左ボクサーファイター。