人生最高の激励賞は恩返しにする。ファーストレートPresents A-SIGH BOXINGの前日計量が30日に都内であった。31日に新宿FACEで8回戦以下6試合を予定。63キロ級6回戦でメイン以上に注目の山口拓也(35=ワールド日立)は61・8キロでパスした。すでに70万円以上の激励賞が集まったが、ジムのトイレ改装費用にあてると明かした。

この興行では資金集めにユーチューブなどを利用してPRし、クラウドファンディングで広告やグッズを返礼にしている。さらに投げ銭で選手に1口500円の激励賞がある。29日時点で山口には断トツの74万6000円が集まっている。

メインは坂井祥紀(29=横浜光)の国内デビュー戦となる。メキシコでプロデビューし、WBC世界ユース王座を獲得している。こちらの激励賞は35万8500円で、無名の山口にはその倍以上が集まっている異例の事態となっている。選手の取り分は90%。

ユーチューブでの選手紹介企画で、山口ににわかに注目が集まった。中学から引きこもりも25歳で実家を出た。家賃2万円のアパートでガスも冷蔵庫もない極貧生活も、認知症の母のためにと今後に備えているという。3年前に亡くなった父のガラケーを使い、オンライン会見には関係者にスマホを借りて臨んだ。

注目度の高さには「ボクは何もしていない。すごいですね」と驚く。ユーチューブは見ていない。「たき火に火を付けただけで、燃え上がったキャンプファイアを眺めているよう」と表現した。

6回戦のファイトマネーは12万円以上が目安で、33%のマネジメント料、保険料を引かれる。手取りは8万円以下。普段も入場券販売はほとんどせず、10倍以上の最高収入にも「ボクシングで稼いだわけではない。自分のものとは感じない」と話す。激励賞はジムの和式トイレ改装費用にと決めている。

「自分に使うのは…。これで焼き肉やすしを食べてもおいしくない。世話になっている人、女性会員や子供のために使いたい」。スパーリングも出稽古もままならず、代わりにジムOBがパートナーを務めてくれた。激励賞は世話になったジムや人のために使う。また投げ銭が増えそうな、山口らしいプランを披露した。

。13年デビューから4勝(2KO)11敗2分け。18年まで5連敗も、昨年に日本王座挑戦経験ある相手に勝って止めた。「OBコーチのおかげ」と言ったが、今回は「テングになってケンカした」。頭を下げられずに指導を受けられなかったことを悔やんでいた。

相手の鯉渕健(24=横浜光)は18年の東日本新人王決勝まで進んでいる。5勝(4KO)4敗。スーパーフェザー級から2階級挙げてきたが、こちらの激励賞は8万8000円となっている。山口は「多くの応援があるので、見せる、面白い試合をしたい」。28日に誕生日を迎えたユニークファイターは期待に応えられるか。