ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(31=Ambition)の薬物騒動は、違反が認められず処分なしの決着となった。日本ボクシングコミッション(JBC)が19日、都内で会見を開き、倫理委員会の答申を発表。昨年末の防衛戦のドーピング検査で採取された検体が大麻成分の陽性反応を示したことについて、検査の不備や検体の管理体制に不手際があったとして謝罪した。

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弁護士、医師ら第三者で構成された今回の倫理委員会は井岡が薬物規定に違反したと「認定することはできない」と結論づけた。18日に提出されたという答申書を受け、JBC永田有平理事長は「処分はないです。答申書は井岡選手が潔白であるという内容。違反はなかった」と説明。同日午前に開催されたJBC理事会でも了承された。

昨年大みそかに元世界3階級制覇王者田中恒成(畑中)の挑戦を受けた際のドーピング検査で、井岡の簡易検査のA検体から大麻成分、その後の精密検査のB検体の1部からエフェドリン、フェネチルアミン、チラミンの禁止薬物が検出された。残りのB検体1部は再検査のために必要だったが、警察に提供されたことで結果的に検査が不可能な状況に陥っていたという。

さらに試合直前に採取した井岡の尿検体がJBC職員の自宅冷蔵庫で保存され、5日後に常温で移送、検査された事実も明かされた。基本となる冷凍保存ではなかったことで検体が腐敗し、偽陽性になった可能性が高いという。同委員会として「重大な瑕疵(かし)が生じている」とJBCの不手際を指摘した。

今回はJBCアンチ・ドーピング規定に多くの不備があったことも明らかとなり、永田理事長はJBC内にドーピング委員会の設置を報告。週刊誌報道で騒動が始まった経緯もあり、ガバナンス委員会の立ち上げも決め「今後情報漏えいがないような態勢をつくりたい」とした。また井岡、田中と直接会い、正式謝罪する方針も示した。【藤中栄二】