ボクシング元東洋太平洋ライト級王者中谷正義(32=帝拳)が世界的人気スター撃破で、悲願の世界挑戦権をつかむ覚悟を示した。26日(日本時間27日)、米ラスベガスで元3団体統一同級王者ワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)との同級12回戦を控え、8日にオンラインで報道陣に対応。「聖地」でのサバイバル戦を制し、2度目の世界挑戦につなげる意気込みを口にした。

「これに勝てば、世界挑戦できる。世界戦につながる試合として挑みたい。勝機はある。逃げずに立ち向かっていき、迎え撃つ」。落ち着いた話しぶりながら、決戦への自信を口にした。

ロマチェンコは「ハイテク」と呼ばれるファイトで、世界最速で3階級制覇した。昨年10月にテオフィモ・ロペス(米国)との統一戦に敗れて王座陥落も、それまでは米老舗専門誌ザ・リングのパウンド・フォー・パウンドで1位に君臨してきた。中谷は2月に対戦の可能性が浮上し「こんなに早くできるとは。驚いたがうれしかった」という。

対戦が決まると、あらためて映像をチェック。「サイドの動きや中に入っての回転は驚異。穴が少ない選手」と相手の評価は上がった。ただし、フェザー級から上げてきたことで「この階級はベストではない。そこにアドバンテージがある。体を生かして戦いたい」。中谷は182センチと長身に対し、相手は170センチと12センチ小さい。この体格差を生かすつもりだ。

ロマチェンコは前戦後に右肩の手術を受け、今回が再起戦となる。「評価を上げようと違ったリズムになるはず。そのこにもチャンスはある」と見ている。

中谷も19年7月にロペス(米国)に初黒星で1度引退も、世界を目指すために帝拳ジムへ移籍した。昨年12月の移籍初戦で、世界ランカーのフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)に2度ダウンを喫すも、9回に2度ダウンを奪い返して逆転TKO勝ちした。

米国での3連戦となるが、下馬評では劣勢は間違いない。「いつもこんな感じ」と意に介さず。「動きに惑わされず、自分のボクシングを徹底するだけ」。番狂わせを狙う決戦へ向けて、19日に日本を飛び立つ。

◆中谷正義(なかたに・まさよし)1989年(平元)3月8日、大阪市生まれ。小学3年から空手、中学3年時にアポロジムでボクシングを始める。並行して日本拳法も学ぶ。大阪・興国高では、世界4階級王者井岡一翔らと同期。3年時に高校総体ライト級8強。近大を経て、11年6月、井岡ジムからプロデビュー。14年1月、東洋太平洋ライト級王座を獲得し11度防衛。19年7月、現3団体統一同級王者テオフィモ・ロペスに判定負けし、1度引退を表明。昨年12月に現役復帰し、帝拳ジム移籍。身長182センチの右ボクサーファイター。

◆ロマチェンコとは アマ時代から天才と呼ばれ、396勝1敗の驚異的な戦績を残した。08年北京五輪フェザー級、12年ロンドン五輪ライト級で金メダルを獲得。鳴り物入りで13年にプロ転向し、米プロモート大手トップランクと契約した。プロ初戦で世界ランカーを4回KO撃破し世界ランク入り。2戦目でWBO世界フェザー級王者サリドに挑んだが、王者の体重超過もあり判定負け。しかし3戦目にプロ最短タイで世界王者となった。

その後も世界最速7戦目で2階級制覇、18年にホルヘ・リナレス(帝拳)を下し、世界最速12戦目の3階級制覇に成功。老舗専門誌ザ・リング選定パウンド・フォー・パウンド(階級超越の最強王者)ランク1位に君臨した。速さと技術を兼ね備え、愛称はハイテク(精密機械)。相手の棄権によるTKO勝ちが多く、「ロマ勝ち」と呼ばれる。