南の島でさまざまな思いが交錯する。総合格闘技のRIZIN32大会が20日、大会初上陸となる沖縄(沖縄アリーナ)で開催される。

榊原CEOが「沖縄アリーナの建設とともに、沖縄の仲間たちと沖縄でRIZINをやろうという話で盛り上がっていた」と開催の意図を説明するように、県内の格闘技熱は高い。初代キング・オブ・パンクラシストの砂辺光久(42)や、DEEP JEWELSで活躍するにっせー(26)、元HEATライト級王者の皇治と対戦する祖根寿麻(33)など、地元出身のファイターが続々と参戦を表明。早くから一部のチケットが完売したことからも、その注目度がうかがえる。

そんな中で「沖縄大会を開くなら、ぜひ私を戦わせて欲しい。沖縄の舞台でメインでやりたい」と直訴したのが元レスリング世界王者の山本美憂(47=KRAZY BEE/SPIKE22)だった。

神奈川県川崎市出身の山本だが、特別な思いが胸にある。総合格闘技デビュー戦となった16年9月、RIZIN埼玉大会の敗戦後、活動拠点を沖縄県の糸満市へ移動。格闘家の弟、故・山本“KID”徳郁さんが立ち上げた「KRAZY BEE沖縄」で息子の山本アーセン(25)らと汗を流すうちに、島の人々の温かさに触れた。今の自分があるのは「たくさんの家族と言えるような人たち」の支えがあったから。だからこそ、今度は恩返ししたいという思いが強い。「試合が決まった時よりも、沖縄の皆さんの反響を受けた時のほうがうれしかった」と笑みを浮かべ「勝つことが皆さんへの恩返しになるのではないか」と力を込めた。

成長した姿を見せるには格好の相手だ。対戦相手はくしくも、デビュー戦で一本負けを喫したRENA。MMA戦績14戦11勝を誇るシュートボクシングの女王への雪辱は、亡き弟との約束でもある。「総合的な部分で追いつけるように頑張ってきた。全体的なレベルは上がった」と、5年前のリベンジへ自信をのぞかせる。

思い出の地で祝杯を挙げた後は、沖縄を堪能するつもりだ。「私もKIDもアーセンも海がすごく好きだった」と懐かしみ「(試合後には)向こうで食べたものをいっぱい食べたい」と目を輝かせた。宿敵へのリベンジ、弟との約束、沖縄への恩返し-。さまざまな思いを乗せ、山本は戦う。【勝部晃多】