崖っぷちで踏みとどまった。10年連続10回目の出場で初優勝を目指す石井智宏(46)が、メインイベントとなったBブロック公式戦でタマ・トンガ(39)との20分を超える熱戦を制し、リーグ戦初勝利を手にした。

まさかの開幕2連敗を喫していた“ストーンピットブル”が、意地のキックアウトを連発した。試合中盤、トンガに旋回式のバックドロップを受け、後頭部をマットにたたきつけられると、顔をしかめた。再三患部を気にする姿を見せながらも、目の色は変わらなかった。

打撃を受けても「もっと来いよ!」と前進。大技を食らっても、何度もカウント3寸前で跳ね返した。執拗(しつよう)に狙ってくる必殺技のガンスタンを決めさせず、最後は20分7秒、垂直落下式ブレーンバスターで3カウントを奪取。自らの手で、意地の張り合いに終止符を打った。

石井はメインの勝利にもかかわらず、ノーコメントで退場した。過去9度のG1で優勝はない。46歳は、リーグ前の会見で宣言していた。「何を語っても説得力がないと思うから、試合で語ります」。こんなところで、負けるわけにはいかなかった。

これで1勝2敗。決勝リーグ進出は依然として厳しい状況だが、バックステージでは「崖っぷち? そう思っているやつはそう言っておけ。まだまだ終わらないぞ」と言い切った。打たれても打たれても、前進あるのみだ。