日本のボクシング界を変えてみせる。元世界3階級制覇王者で、3150FIGHTファウンダー(founder=創立者)の亀田興毅氏(35)が12日、14日に行う革新的な一大イベントを前に思いと決意を語った。

世界戦の舞台として知られるエディオンアリーナ大阪のメインアリーナで「3150FIGHT vol.3」を開催する。メインには但馬ミツロが日本最速デビュー2戦目で王座を狙う日韓ヘビー級タイトルマッチを組んだ。

他にも東洋太平洋スーパーフェザー級王者・力石政法の初防衛戦。クロアチア国籍でボクシングデビューする08年北京五輪柔道男子100キロ超級金メダルの石井慧(サトシ・イシイ)のヘビー級4回戦。さらに格闘家の皇治がプロボクサーのヒロキングとのエキシビションマッチに臨む。また、従来にない華やかな演出やハーフタイムショーにもこだわり抜いた。

あらゆる楽しみを詰め込んだ「おもちゃ箱」のような興行は話題になり、物議をかもした。今回からプロモーターライセンスを取得して初めて手がける興行となる興毅氏は、周囲のさまざまな声にもぶれることなく、実現にこぎつけた。その裏には「今、(日本ボクシング界を)変えなあかん」という強い信念がある。

今回の興行には2つの大きな変革点がある。ひとつはジム主体の興行から、条件があえばジムの垣根関係なく参戦できる「プラットフォーム方式」へ。そしてファイトマネー。興毅氏は相場とされる金額を調査した上で、その倍を現金で選手に支払うシステムを公表した。

興毅氏の「従来」を覆すやり方には賛同があり、もちろん逆の声もある。

「いろんな声を聞きます。もちろん伝統あるボクシングを軽視していることはありません。でも僕のやることはボクシング界のことを真剣に考えた上での行動であり、何よりも選手ファーストです。プロ野球とかサッカーで報酬の代わりにチケットを渡して手売りしていることはないでしょう。選手にリスクを負わせない。興行がリスクを負わなければならない」

「亀田家」の長男としてド派手なデビューを飾り、世界3階級制覇という華やかな道を歩んできた一方で大バッシングも経験してきた。「従来」を変えることは生半可ではないが、どう戦って変えていくかは、35歳にして膨大な経験値を積み重ねてきている。

今後は会長職は辞し、プロモート業に専念する意向を持つ。興毅氏はその期間を「3年」に設定し、道筋を作った後は第一線から退く考えもある。

「ボクシングをみんながあこがれる世界にしたい」と言い、そのためのシステム構築に全力を注ぐ。今回の興行が、その幕開けとなる。4回戦選手にもド派手演出。ABEMA TVで無料中継と仕掛けていく分、支出も多い。赤字は避けられない状況だが、興毅氏は「未来への先行投資です」と言った。

見えにくかった部分を見えやすくする。分かりやすいスポーツ興行への変革。「カリスマになりますよ」。今回の興行から肩書はファウンダーを名乗る。そして「改革者」を意味するリフォーマー(reformer)へ。「浪速の闘拳」でボクシング界に殴り込みをかけた男が、違う立場で勝負のゴングを打ち鳴らす。【実藤健一】