プロボクシングWBO世界ライトフライ級2位岩田翔吉(26=帝拳)が初めて世界王座に挑む。1日、さいたまスーパーアリーナで同級王者ジョナサン・ゴンサレス(31=プエルトリコ)に挑戦する。

岩田を支えてきたのが、元世界2階級制覇王者粟生隆寛トレーナー(38)だ。10月28日の公開練習でも岩田のミット打ちを担当し「過去一番で良いと思います」と満足そうな表情を浮かべた。

岩田とは20年10月のプロ5戦目からコンビを組む。世界トップと争ってきた経験値を惜しみなく伝えると、吸収力のある岩田も急成長。その後、ライトフライ級で日本王座、東洋太平洋王座、WBOアジア・パシフィック王座と史上5人目となる3冠を獲得した。世界初挑戦を控えた愛弟子をみつめながら「とても落ち着いていると思います。華やかな舞台は本人も好きですし、いつもと変わっているような感じはないですね」と太鼓判を押した。

ゴンサレスは粟生トレーナーと同じくサウスポー。サウスポーが苦手とする攻撃やコンビネーションを言葉と体で伝授した。粟生トレーナーは「駆け引きとか組み立てとか足りないと思って教えてきたが、担当した5試合でできるようになった。今は大人のボクシングができる」と世界挑戦にふさわしいボクサーになったと強調した。

9月上旬に岩田が取り組んだ千葉・成田合宿には、粟生トレーナーが急きょ飛び入り参加した。走り込みメニューのため、指導は中村正彦ストレングス&コンディショニング・コーチが担当している合宿だったが、粟生トレーナーは視察に出向いた。「自分が現役時代に走ったところだし、コースとか教えたり。分からないかなと思って」と岩田のコンディションをチェック。常に岩田の状態を確認する姿が、そこにある。

粟生トレーナーは「指導する選手が世界挑戦するというのは、どきどきというか、何というか、何とも言えない気分。この時に(粟生を担当したトレーナー田中)繊大さんはこんな気持ちだったのかと今回分かりましたね」と苦笑い。岩田に「リング上できく君が代はしびれるぞ」と世界戦が特別な空間であることも、そっと伝えた。

アマ時代には当時史上初の高校6冠を達成し、プロではWBC世界フェザー級王座、WBC世界スーパーフェザー級王座を獲得。選手としてつかんだ世界ベルトを愛弟子にも巻いてもらいたい。岩田の世界奪取をセコンドとして支える。【藤中栄二】