白熱した打撃戦を制して井岡一翔(34=志成)が新王者になった。それだけに試合前の混乱が残念でならない。
「前回の試合後のドーピング検査で井岡から大麻成分が検出された」。試合3日前のJBCの発表で、フランコ陣営は「試合は開催されない可能性がある」とショックを受けたという。これが減量にどこまで影響したかは分からないが、前日計量は2・9キロも超過。試合前に王座を手放した。
A検体の陽性反応が判明したのが1月26日。五輪競技などはこの時点で選手本人に通知して暫定的な資格停止を科し、その後、B検体の分析などをへて処分を決める。JBCが同じ手順を踏んでいれば、日程こそ後ろ倒しになったかもしれないが、試合は混乱なく実現した可能性が高い。
JBCの安河内剛本部事務局長は「B検体でも陽性反応が出た」と話したが、大麻成分は世界反ドーピング機関(WADA)が規定する境界値を下回るので違反ではないとして、試合を容認した。大麻は米国の一部の州などで合法化されており、境界値以内であればスポーツの安全性や公平性には影響ないというのがWADAの考え方だ。
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)もこの規定を採用しているが、日本で大麻は法律で厳しく規制されている違法薬物。そこに矛盾点がある。ボクシングは伝統のある人気スポーツ。今回の混乱を教訓として、ドーピング検査で違反が疑われる結果が出た際の手順の明確化と、違法な成分が検出されたときの独自のルールづくりを検討するきっかけにしてほしい。【首藤正徳】

