世界最速2階級4団体統一&日本人史上初の世界ベルト2ケタ獲得。ボクシングWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥(30=大橋)が、新たな称号をつかむ準備が整った。今日26日に東京・有明アリーナで行われるWBAスーパー、IBF世界同級王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)戦に向け、横浜市内での前日計量は両者そろって一発クリア。2階級4団体統一に8年3カ月かかったテレンス・クロフォード(36=米国)を抜く5年7カ月で、史上2人目の偉業を手中に収めるつもりだ。区切りの10本目獲得で、世界のボクシング界にまた新たな歴史を刻む。

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クールな行動だった。井上は前日計量をリミット(55・3キロ)よりも100グラム少ない55・2キロでクリア。55・0キロでパスしたタパレスと恒例のフェースオフ(にらみ合い)に臨んだ。8秒後、すぐに右手を差し伸べ、タパレスと握手を交わした。「フェースオフを長くやっても仕方ない。試合前日、内に秘めたものがある」と最後まで冷静な口調で意気込みを示した。

「世界における偉業」と位置づける史上2人目の2階級での4団体統一への挑戦には他にも“記録”がかかる。14年4月のWBC世界ライトフライ級王座獲得を皮切りに計8本の世界ベルトを獲得してきたが、タパレスから2本を奪えば、2ケタに乗せる区切りの10本目。6本の井岡一翔、5本の高山勝成らを離し、独走する日本最多の世界ベルト獲得数をさらに伸ばす。

またクロフォードは8年3カ月かけて2階級での4団体統一を達成させたが、井上がタパレス戦で成し遂げればWBA世界バンタム級王座を獲得した18年5月を皮切りに5年7カ月と、大幅に“偉業”を更新する最速記録。モチベーションは高まるばかりだ。「コンディションはばっちり」と短い言葉で手応えを示した。

短いフェースオフ時間ながらも、タパレスの顔からコンディションを見極めていた。「しっかりとタパレスの表情もみられた。昨日(の会見時)よりも一段と(体重を)絞ったなと。(減量が)楽ではないだろうという感じに見えた。でも(リミットより)アンダーで仕上げてきたので、お互いにここからのリカバリーをどうしていくかで、明日の大きな差になっていくと思う」と解説。細心の注意を払って調整する姿勢をみせた。

まだスーパーバンタム級転向2戦目ながら「フィット感はかなりある。(7月のスティーブン・フルトン戦より)もっとプラスに、良く仕上げることができた」と納得の笑みを浮かべた。同級転向表明からわずか1年。同級で再び「最強」「最速」の称号を狙う。【藤中栄二】

 

◆井上の最速メモ 13年に日本ライトフライ級王者田口良一を下し、当時国内最速タイ4戦目で日本王座獲得。同年にはマンシオ(フィリピン)を倒し、当時国内男子最速タイ5戦目で東洋太平洋王座を奪取。14年にWBC世界同級王者エルナンデス(メキシコ)を倒し当時国内男子最速6戦目で世界王座を獲得。同年はWBO世界スーパーフライ級王者ナルバエス(アルゼンチン)も倒し当時世界最速8戦目の2階級制覇。18年はWBA世界バンタム級王者マクドネル(英国)を下し、当時日本最速16戦目で3階級制覇。同年のパヤノ(ドミニカ共和国)戦では70秒KO勝ちで、日本男子世界戦最速KO記録をマークした。

 

◆2階級での4団体統一メモ テレンス・クロフォード(米国)がスーパーライト級、ウエルター級で史上初めて達成。スーパーライト級は15年4月に王座決定戦でWBO王座を獲得し、16年7月にWBC王座を追加。17年8月にWBA、IBF王者ジュリアス・インドンゴ(ナミビア)に3回KO勝ちし4団体統一。ウエルター級は18年6月にWBO王座を獲得し、23年7月に3団体統一王者エロール・スペンスJr.(米国)を9回TKO撃破し4団体統一。2階級の4団体統一を成し遂げるまでに8年3カ月かかった。井上が勝てば5年7カ月の達成で史上最速となる。