<女子プロボクシング:WBCアトム級タイトルマッチ10回戦>◇11日◇後楽園ホール

 国内初開催となる女子ボクシング世界戦は、ドタバタの「灰色決着」だった。アトム級9位の小関桃(26=青木)が、同級王者ウィンユー・パラドーンジム(24=タイ)に挑戦。2回48秒でKO勝ちとなった後、ダウンはバッティングが原因の可能性があるとして国内初のビデオ判定に持ち込まれた。ひとまず小関の勝利が確認されて新王者誕生も、今後WBC本部でビデオが再検証される異例の事態となった。

 2回30秒すぎ、ガツンという鈍い音とともに王者は確かにマットへと崩れ落ちた。自身の左が当たったと確信した小関は、静かに10カウントを聞く。レフェリーが両手を上げた瞬間、セコンドがなだれ込み、小関はもみくちゃになった。

 直後、王者ウィンユー陣営から「ダウンを奪ったのはパンチではなく、小関の頭が顔面に激突した偶然のバッティングによるもの」とクレームがついた。WBCは今年6月から日本で導入したビデオ判定を国内で初めて使用。約1時間の審議の結果「この日の勝者はレフェリー宣告通り小関とする」とした。同時に「非常に難しい判断なため、ビデオをWBCに提出して判断を求める」ことを発表。本部での判断は10日から数週間かかる見込みで、引き分けかノーコンテストでベルトはく奪、あるいは小関がベルトを保持したまま再戦というのが濃厚だ。

 当の小関はベルトを脇に置いて「まだ実感がない」と話した。KOシーンについて「それまでもお互いに(頭の)バッティングはあった」と前置きした上で、「その後に手応えのあるパンチが当たった」と主張。昨年8月には敵地タイで対戦して1ポイント差で敗れている。「今日はパンチも当たっていたし、相手の体に力がないと思った。再戦も受けるし、またやっても勝てる」と言い切った。

 ボクシングではこれまでもパンチかバッティングか判断の難しいケースはあり、ビデオ判定は公平を期するためには1歩前進といえるだろう。だが国内初使用の今回は「完全決着」を導けず、ドタバタ劇となってしまった。【山田大介】