<特集・UFCがやってくる!!(2)>

 UFCの試合は「オクタゴン」と呼ばれる金網に取り囲まれた正八角形のケージ内で行われる。直径は9メートルで、約40畳の面積。一般的な総合格闘技やボクシング、プロレスなどで使用する7メートル四方のリングに慣れた選手にとって、勝手が違う舞台だ。98年から計6試合、日本人で初めてUFCに定期参戦した高阪剛氏(41)は「外側から見た印象と違い、戦っている選手はかなり広い。相手とコンタクトするのが難しく、攻撃を仕掛けるまでの時間が長く感じられる」と話す。

 広いオクタゴンでは、相手が1歩前に踏み出すか、横に踏み出すかで距離感が変わる。状況に応じて絶えず、ポジションを修正する必要がある。黒い金網に囲まれ、マットがスポットライトに照らされるため「真っ暗な中に、マットだけが浮かび上がっている感覚。周りが全く見えない」。攻防に気を取られすぎていると突然、相手の背後に金網が現れたり、いつの間にか自分が背にしていることもあるという。

 直径の長い正八角形は、ほぼ円形に近い。つまり、オクタゴンには、リングでいう「コーナー」がない。高阪氏は「ここに相手を追い詰めればいい、という目標物がない。事前に相手の特徴を把握し、常に2手、3手先まで戦い方をイメージしておかないと、何をしていいか分からなくなる」と指摘する。

 独特の空間の中、世界トップクラスの実力者と対峙(たいじ)する選手たち。精神的なプレッシャーは計り知れない。【構成・山下健二郎】

 ◆オクタゴン

 UFCの試合場の通称。試合は金網で囲われた正八角形のケージ内で行われる。ケージの直径は9メートルで、金網の高さは約1・83メートル。UFC創設期にプロデューサーを務めたホリオン・グレイシーの友人で、映画監督のジョン・ミリアス氏が考案した。金網には微妙な柔軟性があり、体を押し付けた際、わずかにしなる。金網をつかむ行為は反則だが、その特性を生かして自ら金網に背をつける選手もいるなど、攻防のポイントになる。