大関とりの関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)が、白星発進した。平幕妙義龍を一気に押し出す完勝。

母校の兵庫・仁川学院小の児童50人が応援に駆け付ける中、相撲を始めた原点でもある大阪で地元のファン、後輩の期待に応えた。大関に昇進した力士は、昇進場所で9割近くが連勝発進しているだけに、落とせない序盤戦が続く。

文句のつけようがない内容でも、貴景勝は「普通っす」と武骨だった。妙義龍を立ち合いの1発で起こし、難なく押し出した。理想に掲げるまわしを触らせない相撲で、昇進目安の10勝以上へまず1勝。「(大関とりも)今場所に限って大事とかない。序ノ口の時から毎場所を大事にしてきた」。今場所の主役に浮かれた様子はなかった。

秀才軍団の声援に後押しされた。母校の兵庫・仁川学院小の児童50人とその保護者50人の計100人が観戦。打ち出し後には児童らと写真撮影に応じた。後輩が見守る中での一番に、貴景勝は「恥ずかしい相撲は取れない」と奮起した。今場所に合わせて同校が観戦希望者を募ったところ、全校児童300人のうち100人が手を挙げるほどの人気ぶり。前師匠の元貴乃花親方(元横綱)の方針で「一人前になるまでは」と後援会を持てなかったが、昨年には同窓生を中心とした後援会が200人規模で発足した。カトリック系の学校だけに、発足日は12月24日。同校は1学年50人のうち、半数近くが大学医学部へ進学する名門校。同校広報部によると、唯一といっていいトップアスリートの出現にOB・OGの興奮が収まらないという。

データ上でもスタートダッシュは重要になる。平成以降で大関に昇進した力士25人中、22人の9割近くが直前場所の初日に白星。そのうち21人が連勝発進に成功しているだけに、貴景勝も出だしは落とせない。

何かと因縁深い準ご当所で、地元の大声援に応える。兵庫県出身で春場所の舞台、大阪はほど近い。相撲転向前の小3で極真空手を辞めるきっかけになった、全国大会の決勝で判定負けしたのも春場所と同じ会場。1年前には右足の負傷で自身初の休場も味わったが、状況は変わった。今場所は横綱、大関陣を抑えて指定懸賞本数トップ。場内の声援もひときわ大きい。「数ある力士の中で自分を応援してくれる。プロだから、がっかりするような相撲は取りたくない」。ファンあっての大相撲。22歳の若武者は、それを十分に自覚している。【佐藤礼征】