大相撲九州場所は10日に福岡国際センターで初日を迎える。初日を控え、日本相撲協会が力士ら協会員個人によるSNS投稿の自粛を通達していたことが9日、分かった。

小結阿炎(25=錣山)と十両若元春(26=荒汐)がインスタグラムに不謹慎な動画を投稿したことを受け、6日に芝田山広報部長(元横綱大乃国)が各部屋へ通達していた。1年納めの場所で、土俵外からの“つぶやき”などが届かなくなりそうだ。

大相撲人気に一役買い、ファンとのつながりを深める手段の1つでもあったSNSによる関取らの発信が、しばらくなくなりそうだ。この日、会場での土俵祭り後、協会は阿炎と若元春に口頭で厳重注意した。両関取の行為が生んだ騒動を受けて、鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)は協会員個人によるSNS使用の自粛を通達したことを明かした。

「(SNS使用禁止の流れに)なるんじゃないの」と私見を述べた上で「ただ、個人だからさ。専門家にやってもらわないと、我々では対応できない」と、外部の意見を取り入れた上で、正式に判断する見通しを示した。あくまで暫定的な処置で、期間は未定だが、当面自粛を求める。

発端はインスタグラムの動画だった。4日に阿炎が、若元春の口をテープでふさぎ、腕や足を縛ってふざける動画を投稿。これがSNS上で拡散。角界が暴力根絶を目指す中で「暴力を連想させる」など、自覚を欠いた行動として批判の声が上がっていた。

個人での投稿自粛で、今後しばらくはSNSを発端に、同様の問題が生じるリスクは排除されるが、異例の動きともいえる。今や幕内力士42人の半数以上が、SNSで投稿内容を公開した個人アカウントを所有している。他競技を含め、アスリートや有名人がファンに向けて応援に対する感謝を述べたり、プライベートの様子を発信する事例が日常的になった。SNSは、ファンとの距離を縮める1つの大きな要素とされていただけに、早くもSNS上には残念がる“つぶやき”があがっている。

素早く対応した形の協会側は、今後、SNSに関する研修会も実施予定。対応した広報部長の芝田山親方は「ほのぼのしたようなものならまだしも、今回のようなものを全てパトロールすることはできない。どこで見られているか分からないし、自重してもらう」と説明した。

阿炎と若元春は9日、インスタグラムで不謹慎な投稿をしたことについて反省文を提出し、八角理事長(元横綱北勝海)らに謝罪した。2人は協会から指示されていた集合時間の午後0時30分より約30分早い、正午すぎに福岡国際センター内の役員室へ。約5分後に2人そろって退出した。人気者の阿炎は声のトーンを落とし「理事長に謝罪した。今回は本当に自覚が足りなかった」と猛省。若元春は「すみません」と神妙な表情だった。ともに、10日からの九州場所には通常通り出場する。

阿炎は八角理事長から「土俵で目立ちなさい。そのほかはもういいから」と言葉をかけられたという。三役として協会の看板を背負う1人で、今場所で新三役から3場所連続の勝ち越しを目指す。「自覚を持って相撲を取りたい。これからの自分を見てほしい。変わっていきたいと思う」と改心を誓った。