小結朝乃山(25=高砂)が、大関貴景勝を1年半ぶりに破り、三役以上では唯一の連勝発進となった。

188センチの自身より13センチ低い3連敗中の相手を上手出し投げ。初日は横綱鶴竜の休場で不戦勝だったが、事実上の初日に快勝した。今年46勝目で年間最多勝争いで関脇御嶽海、小結阿炎に並んだ。この日は横綱、大関、関脇と上位陣が総崩れ。3日目に横綱白鵬から初白星を奪い、波乱の場所の主役に躍り出る。

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心技体がかみ合った。朝乃山は、相手に2度つっかけられても動じなかった。3度目の不成立は避けたい貴景勝の内面を見抜いたように、わずかに立ち合いの圧力を欠いた相手をはじき飛ばすと、すぐに二の矢を放った。前に出続け、相手のいなしに乗じて左上手を取り、右も差した。土俵際に追い込み、1度は切れた上手を再び引き、タイミング良く出し投げを打った。年下の大関を昨年夏場所以来、1年半ぶりに破った。

「大関の方が地位も上だし、力も上。僕みたいな小結は思い切っていくだけだった」。大卒の自身より、1年半早く角界入りした3学年下の貴景勝に敬意を示した。それでも先場所、貴景勝に敗れた一番は悔いが残った。「自分から攻めなければ負けるし、攻めたら引かれる-」。四つ相撲の朝乃山にとって、13センチの身長差は前傾姿勢を強いられるが、貴景勝の引き技の格好の餌食。そんな中、この日の朝稽古で師匠の高砂親方(元大関朝潮)に「立ち合い集中。攻めろ」と声を掛けられた。「前に出る」という決意を後押しされた。

初日は不戦勝とはいえ、連勝発進は三役以上で朝乃山1人だけだ。三役で初めて相撲を取って挙げた白星にも「変わらない。勝ったことはうれしいけど、まだ終わりじゃない」と冷静。現在、取組後の部屋では、テレビ番組の芸人大喜利王決定戦「IPPONグランプリ」をユーチューブで観賞するなどして「相撲のことを考えないようにしている。毎日考えると神経を使うので」と、リラックスに努め、この日の落ち着いた取り口につなげている。

年間最多勝争いでトップに立っても「それは取っても取れなくても」と至って冷静だ。3日目は同じ右四つの白鵬と2度目の対戦だが「横綱を慌てさせる相撲を取りたい」。勝って世代交代の旗手に名乗りを上げるつもりだ。【高田文太】