コロナ禍で揺さぶられる場所だが、最終盤の優勝争いでも波乱の土俵となった。

2敗でトップを並走する平幕の逸ノ城(29=湊)が、安易な張り差しからつかんだ左上手を切られ、巻き替えに行くところを寄り立てられ明生(26=立浪)に寄り切られ3敗目。1差で追う3敗の大関貴景勝(25=常盤山)も、関脇若隆景(27=荒汐)に右の差し手を振り払おうと強引な小手投げが墓穴を掘るかっこうとなり、送り出されて4敗に後退した。

がぜん有利になったのが結びの横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)。勝って2敗を守れば、追うのは3敗の逸ノ城1人になり、千秋楽で勝てば優勝決定という、お膳立ても整えられた。だが、その照ノ富士も大関正代(30=時津風)の立ち合いの当たりを止めると冷静さを欠いたように猛進。正代にいなされると、目標を失いそのまま前のめりに倒れた。

勝てば断然有利の横綱が敗れ、報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は「もっと(正代が)出てくるかなと思ったら、いきなりいなされた」と、あっけない勝負を振り返った。「相撲っていうのは分からない」と続けた後、さらに「明日の千秋楽が楽しみだ」と期待。一時は1差に後退した逸ノ城が再び並び、優勝が絶望的になった貴景勝にも逆転優勝の可能性が出たが「精神的に強いのは横綱ですから」と、番付最上位が面目を保つことにも期待するような口調だった。逸ノ城には「楽に上手を取りたい、だから小手先で張り差しに行った。それではだめ。もっと苦労して上手を取ろうとしないと」と苦言を呈し、貴景勝の一番には「右を入れられたから小手投げに行くしかなかった。そうさせた若隆景の立ち合いが良かったということ」ろ若隆景の勝因を強調していた。