西前頭3枚目の宇良(30=木瀬)が、宝富士に伝え反りで勝った。幕内で「伝え反り」が決まり手となったのは、2002年秋場所の朝青龍以来20年ぶり。伝え反りは、相手の脇の下をくぐり抜けながら自分の体を後ろに反らせて、その圧力で倒す技。宇良が珍手を繰り出した時、アナウンサーはどう伝えたか。

NHK大相撲中継では、小林陽広アナウンサー(41)が幕内実況を担当していた。宇良が技を繰り出した時、「居反りにいった! 脇の下をくぐって、反り落としました」と伝えた。しかしすぐに「脇の下をくぐったので、伝え反りを取るでしょうか。勝ったのは宇良です」と補足。アナウンサー泣かせと思いきや、間を空けずに伝え反りとなる可能性を示すなど、さすがのアナウンス技術を披露した。

大相撲実況の先輩となる藤井康生アナウンサー(65)は、今年1月いっぱいでNHKを退局し、フリーになったばかり。この小林アナの実況ぶりを伝え聞くと「なかなかいいですね。たのもしいですよ」と元同僚を褒めた。

もし、藤井アナが実況していたら「伝え反り」と瞬時に言えただろうか? 「伝え反りと言ったでしょうね。宇良の相撲を見ていると、あの形になることはありましたから。小林もあの形が頭に残っているでしょうから、早い時点で言えたのだと思います」と指摘した。【佐々木一郎】

○…藤井アナはこの日、初めてプライベートで大相撲を観戦した。向正面のマス席でかねての夢をかなえ「国技館に入る時から、いつもと景色が違いました。夢のような時間でした」とかみしめていた。