東幕下38枚目で十両経験者の朝乃若(27=高砂)が、奇策の連続で現役最重量252キロの出羽ノ城を破った。立ち合いは、仕切り線よりもずっと後方、土俵際に近い位置から手をついた。直後に相手の視線の先で両手をたたく「猫だまし」。さらに懐に潜り込むと、最後は裾払い。最初から最後まで、相手の裏をかく戦法で、133キロの自身よりも119キロも重い相手を転がした。

取組後は「いろいろやって、翻弄(ほんろう)しようと思った。(立ち合いの猫だましは)初めてやった。突っ込んで行くと、見せかけようと思った」と“してやったり”とばかりに、ニヤリと笑った。ただ猫だましは、やられた相手だけではなく、自身も不慣れで「慎重にやった」と、思い切りに欠く印象で、奇襲としては不発な感もあった。ただ、すでに引退しているが部屋の兄弟子だった、当時の幕下朝鬼神が、やっているのを見て「やってみたかった」と、常々思っていたという。

そんな奇襲の連続を出羽ノ城戦で繰り出したのには、理由があった。9日目の大日堂-出羽ノ城戦。重い相手に約3分の長い相撲となり、勝った大日堂が疲労困憊(こんぱい)で、なかなか起き上がることができない姿を、出番待ちの土俵下で見ていた。「250キロは半端ない。正面から攻めるのはきついなと思った」と、初顔合わせで、この日の攻めになったという。

すでに負け越しているが、4連敗から連勝で、2勝4敗とした。「来場所につながるように、あと1番、頑張りたいです」。奇策の連続で、恥ずかしそうに、照れ笑いを浮かべながら取材に応じていたが、最後に真面目な表情で受け答え。気を引き締め直していた。