大関までの道のりは、土俵外も一筋縄ではいかなそうだ。大相撲で大関昇進を確実にしている関脇安青錦(21=安治川)が、ウクライナ出身として初優勝した九州場所千秋楽から一夜明けた24日、福岡・久留米市の部屋で会見。26日の番付編成会議、臨時理事会を経て行われる、昇進伝達式の口上について、師匠の安治川親方(元関脇安美錦)に「自分で考えろ」と、言われたことを明かした。流ちょうな日本語を話すが、厳粛な場での言葉選びは日本人でも高難度。優勝決定戦の末につかんだ土俵上に続き、新たな試練が訪れた。

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喜びと、これまでの苦労をかみしめる言葉があふれた。夢だった初優勝と大関昇進を同時につかんだ、人生最良の日から一夜明けた安青錦は「1つ恩返しができて、うれしかった」と安治川親方への感謝を口にして、ほほ笑んだ。千秋楽パーティーから急きょ名称を変え、久留米市のホテルで行われた「優勝報告会」で大杯に注がれた酒は「あんなにうまい酒は飲んだことがない」と笑った。戦禍を逃れてドイツで暮らす両親には電話で報告したといい「お母さんは泣いていた。お父さんも泣いていたらしい」としんみりと語った。

そんな中、急に困り顔連発で、コミカルな雰囲気となったのは、昇進伝達式に話題が及んだ場面だった。「大関安青錦」が誕生する晴れ舞台の注目は口上。直近では横綱大の里の「唯一無二」など、四字熟語を入れることが多い。そんな中で安青錦は「昨日、親方に『自分で考えろ』と言われてしまって…」と、苦笑いで打ち明けた。「自分だと『頑張ります』しか言えない。手伝ってほしいな」と話し、報道陣を笑わせた。

言葉は流ちょうでも、ウクライナから来日3年半では、漢字の読み書きに限界がある。口上の中身は現状では「全く考えていない」というが「自分らしくいきたい」と、四字熟語を用いるかどうかも検討中だ。自分の思いを表現する四字熟語があるかどうかを含めて「本当に昨日の通り『自分で考えろ』と言われたら調べるしかない」。四字熟語の猛勉強もあり得そうだ。

それもこれも、うれしい悲鳴と受け止め「とりあえずラーメンを食べてから」と笑い飛ばした。「脂っぽいものは」と、場所中は体調管理に細心の注意を払って控えていたラーメンを、場所前以来、口にする瞬間を想像し、自然と笑みがこぼれた。土俵内外で冷静沈着でありながら大胆不敵。会見も正々堂々、一生懸命に務めた安青錦の口上は26日午前の見込み。どうなるか見ものだ。【高田文太】

○…すでに昇進伝達式の準備は万全だ。部屋宿舎を提供する久留米市の水天宮で宮司を務める真木啓樹さん(46)は、安治川親方とは現役時代からの縁。安青錦にとって九州場所は3度目で、毎年、真木さんと約束を交わしてから帰京。一昨年は「来年は十両で帰ってきます」と約束通り。昨年は「小結で帰ってきます」で、むしろ約束以上の関脇に昇進していた。そんなスピード出世に、真木さんは「(九州場所)10日目には金びょうぶも赤いじゅうたんも用意しました」と、約1週間前から昇進に備えていた。「場所前は稽古見学に大勢来て、200台の駐車場がいっぱい」と、人気の高まりを実感していた。