【例えば走者二塁、外野への単打の場合】

走者が三塁を回って本塁に向かう。ぐるぐる腕を回すのか、大きく広げて止めるのか、三塁コーチャー最大の見せ場だ。走者の走力、相手野手の肩の強さ、守備の位置、勝っているのか負けているのか、得点差は…状況判断の要素はたくさんあるが、基準を持っておけば、整理しやすくなる。

「三塁コーチャーバイブル」著者・川島敏男さんの口癖の1つに「ランナーコーチャーの原理原則」がある。あらゆる場面で判断は変わるが「原理原則」を持っておけば、走者への速やかでリスクが少ない指示につながる。

例えば走者二塁で、外野へ単打が飛んだ場合、川島さんは外野手が捕球した瞬間の、二塁走者が走っている位置を基準にする。走者の走力は標準、捕球した野手の肩は標準、守備位置は極端な前進でも深めでもなかったのが条件だ。

❶三塁ベース前=ノー・ゴー(ストップ)

❷三塁ベース通過=ゴー

❸三塁ベース上=ジャスト(勝負)

その時々の判断で、得点できればそれで良しなら簡単だが、アウトになって「仕方ない」で済ますには、悔いが残るし、進歩がない。❶❷の基準があれば、判断理由が明確になり、チーム内でも整理して考えやすい。

難しいのは❸「ジャスト」だ。繰り返すが、走者の走力、野手の力量と捕球位置、試合展開、アウトカウント、打順などを瞬時に判断して指示をする。「ジャスト・ゴー」で得点できれば、三塁コーチャーの好判断としてたたえられる。

ただし、川島さんは「基本的に『迷ったらストップ』を薦めます。走者が残って、チャンスが続くからです」という。プロ野球の三塁コーチャーでも、迷ったら行かせる場合が多い。長期間のリーグ戦なら、取り戻す機会もあるからだが、アマチュアは負ければ終わりのトーナメントが多い。「行け、行け」の雰囲気に包まれると、ベンチだけでなくスタンドからも「回れ」の声が響く。雰囲気に流されず、慎重に「ストップ」を指示するのも、勇気のある判断で、勝負には必要だ。ただし、判断後に相手のミスが起こったら…。

次回は「『ストップ→ゴー』の技術と意識」。【久我悟】