[ 2014年6月26日7時51分

 紙面から ]サポーターに深々と頭を下げるザッケローニ監督(左)(撮影・PNP)<W杯:日本1-4コロンビア>◇1次リーグC組◇24日◇クイアバ

 【クイアバ(ブラジル)24日(日本時間25日)】ザックジャパンが世界の舞台でなすすべなく惨敗した。1次リーグを終え、1分け2敗でC組最下位に沈んだ。守備的なサッカーで決勝トーナメントに進出した10年南アフリカ大会から4年。アルベルト・ザッケローニ監督(61)の下、攻撃的サッカーを掲げたが、世界の壁にはね返され、日本の「現在地」を思い知らされた。4年後の18年ロシア大会に向け、日本サッカーはどこに進めばいいのか-。W杯取材班キャップが提言する。

 これほどまでに、もろくも敗れ去るものだろうか。主導権を握り、攻撃的なサッカーができたのは、コロンビア戦の60分間ほどか。ブレが出たザッケローニ監督の采配、それをピッチ上で修正できなかった選手たち。日本サッカーの幼さを露呈した。

 「自分たちのサッカー」が理想であるとすれば、結果という現実とのかい離があった。パスをつなぐ「自分たちのサッカー」は本来はゴールを奪い、勝つための手段。だが、いつのまにか「自分たちのサッカー」をピッチ上で見せることが目的に替わった。それを愚直に追い求め、できなくなると他の対処法がない状況では、世界レベルの公式戦では勝ち切れない。

 前回大会では岡田監督のもと、守備を固めたサッカーで16強入り。あれから4年。主将のMF長谷部が「日本サッカーの10~20年後のためのサッカーを見せたい」と話したように、日本人の俊敏性やスピードをいかし、細かいパス回し、切り替えの速さを前面に出したサッカーを貫いてきた。

 ただ「貫きました。でも負けました」では、W杯を戦うべきではない。大会前も「自分たちのサッカー」が機能不全に陥った時、チームが試合中に立て直せないことが課題だった。劣勢の時、1度引いて守備を固め、またはボールを維持することで流れが戻るまで耐える-。自らの持ち味を出しながら試合の状況に応じて試合運びを変える「大人のサッカー」への進化はなかった。マンチェスターU、ACミラン、インテルミラノ、シャルケなど名門クラブの選手は増えたのに…。

 18年W杯ロシア大会までの4年間、日本は強化の面で世界と大きな差をつけられる可能性がある。国際サッカー連盟(FIFA)は年間の国際Aマッチを、これまでより年間平均で2~4試合減らすことを発表済み。欧州連盟は国際Aマッチデーに代表レベルのリーグ戦を開催し、その成績をW杯や欧州選手権の出場権に反映させる計画を持つ。W杯予選が入らない国際Aマッチデーに欧州の強豪と敵地で強化試合を行うのが、通例の強化パターン。ただ、欧州各国が「代表リーグ戦」で国際Aマッチデーを使い切る状況になれば、それも実行できない。

 今回、日本どころかアジアが世界との距離を開けられている現状を露呈した。日本が目指すパスサッカーの象徴スペインが1次リーグで敗退し、一方で強烈な個、ストライカーのいる国が勝ち進む傾向が顕著になった。だが、強烈な個が出にくい日本は、日本人の俊敏性やスピードをいかしたパスサッカーを貫くべき。それが、サッカー界の強国がそれぞれ持つ「国の色」の創造につながるはずだ。

 コートジボワール戦のように、FW本田が簡単にはじき飛ばされるのがW杯。一方でコロンビア戦の後半13分にMF青山、長谷部とつなぎFW香川がシュートを放った場面や、同14分には左サイドに展開してDF長友の突破から鋭いクロスをFW大久保が合わせた場面などは、日本サッカーが通用した部分といえる。

 当然、W杯は勝ちにいく大会。日本サッカーの「色」を形作った上で勝つためには、状況に応じて戦い方を柔軟に変える「大人のサッカー」ができなくてはならない。個々ではその判断が利く選手がそろっていた。ただ、チームとして理想にとらわれすぎたことが致命傷となった。

 日本サッカーは理想と現実のバランスを取る意味では、まだ幼かった。だが、理想を追求して現実を知ったことは将来的には大きな意味を持つ。4年後、「色」を形作り「大人」になるために。【菅家大輔】