6月のAKB48選抜総選挙の速報1位で、一躍時の人になったNGT48荻野由佳(18)が、日刊スポーツの取材に応じて、オーディションに落ち続けてきたおちこぼれ半生の、逆転の転機になったAKB48グループドラフト会議について語った。2年半前の第2回ドラフト会議で、ゆかりのない新潟のNGT48に2巡目で指名された。当初は、実家の埼玉から通えるAKB48だけを希望していたが、運命に身を任せてNGTに加入。わずか2年でAKBの頂点にまで駆け上がった。

 荻野は、来年1月開催の「第3回AKB48グループドラフト会議」の候補者オーディションの募集中の今、夢をみる少女たちに「まずは一歩を踏み出してみて。ドラフト候補生にしかできないレッスン合宿などの貴重な経験が積めます。合否に関係なく、その先には新しい未来も開けてくるので」とエールを送った。

 4年前の第1回で指名漏れした間島和奏(17)は今、テレビ朝日で放送中の「ラストアイドル」のセンターで活躍。第2回の落選組にも、その後にAKBグループに加入した子が8人、けやき坂46の影山優佳(16)らがいる。第3回オーディションの募集は、9日に締め切られる。

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 荻野は、自分に向けて、アイドルに憧れる子たちの声が殺到していたことを明かした。

 「実は、9月24日に第3回の開催が発表されると、私のインスタグラムに、数百件ものドラフトについてのダイレクトメッセージが届いたんです。『私も由佳ちゃんを見ていたら、受けたくなりました』とか『応募を迷っています』とか。でも、個人へのメッセージ返信ができないので、どこかでお話ししたいなぁって思っていたところだったんです」。

 握手会や劇場公演でも、ファンを引き付けている、身ぶり手ぶりを交えた熱弁で、その内実を語り始めた。

 「私の人生の転機は、間違いなくドラフトです。1巡目では指名されずに、2巡目も、ほかのグループで選択終了が続いたので、『もうダメだ…』って諦めていたんです。そこで最後にNGTの2巡目で指名されました。あの時の喜びと興奮は、一生忘れられないです」。

 それまでの荻野は、何度も夢に破れた落ちこぼれだった。オーディションに落ち続けた歴史は以下の通りだ。

 <1>11年にAKB48第13期生オーディションで書類選考落ち

 <2>12年にAKB48第14期生オーディション落選

 <3>同年にavexアイドルオーディション2012落選

 <4>14年にAKB48チーム8埼玉代表オーディション落選

 <5>13年にAKB48第15期生に仮研究生で合格も、昇格できずに不合格

 <6>14年にバイトAKBに合格も翌15年に契約満了でアイドル活動を終了

 第2回ドラフト会議は、16歳にして、7度目の挑戦だった。ドラフト候補生としての日々が、最も思い出深くて、貴重な日々だったという。

 「候補生のレッスン合宿は、すごく過酷でした。歌の先生の指導が、本当に怖くて厳しかった。でも、実際のAKBの歌とダンスの先生たちに教われるんです。それまでの、どのレッスンよりも本格的で身になりました。実際に、ドラフトで指名されなかった子の中でも、のちに48グループの普通のオーディションに合格した子がたくさんいますし、ひらがなけやき(けやき坂46)に入った影山優佳ちゃんもいます。みんな、あの合宿の経験が糧になったんだと思います」。

 努力が報われて、第2回ドラフト会議で指名された荻野だが、新潟のNGTとは、希望のグループではなかった。自宅は埼玉。両親とも「第一志望は通える距離のAKB48」と言っていた。事前の面談で「もしも、新潟のNGTに指名されたら?」と尋ねられてもノーと答えていた。それでも、運命を自分で変えた。

 「NGTの北原里英さんと柏木由紀さんに指名された瞬間、心からうれしかった。自分の中の何かが『プチン』と切れて、開放された感覚がありました。その瞬間に『私は行きたい!』って、180度気持ちが変わったんです。両親もOKを出してくれました」。

 見知らぬ土地へ行くことに不安もあったが、アイドルになる夢と希望が勝った。

 「新潟を第2の故郷にしようと、たくさん調べて、上越新幹線に乗りました。そんな前向きな気持ちでいれば、自然となじんでくるんですね。今では、新潟を離れる時の方がさみしくて、埼玉の実家に帰っても、ちょっと不思議な感覚。実家に服が全くなくなった時もあります(笑い)」。

 わずか2年で、日本中が注目するAKB48選抜総選挙の速報で、指原莉乃や渡辺麻友らも押さえて、堂々の1位にランクインした(最終結果は5位)。大手芸能事務所ホリプロへの移籍までかなった。誰も想像できなかったシンデレラストーリーを実現させた。

 「NGTに指名していただかなければ、今の私は絶対にありません。新潟のためにと活動していたら、いつしか、新潟の皆さんが私を応援してくださるようになりました。応募やオーディション段階では、どこのグループに行くか分からずに、不安になるのは当然です。それはドラフト会議だけの悩みです。でも、だからこそ、大きな可能性も秘められていると思うんです。未来に何があるかは、誰も分かりません。まずは、指名されてから、考えればいいと思います。指名されても、希望に添わなかったら、辞退、拒否することもできるので」。

 応募を思い悩む少女たちに「まずは、夢に一歩踏み出してみて」と説いた。

 「指名辞退の権利もあるし、たとえ落ちても本物のレッスンを受けられる経験ができます。それに受かってからも、同期生がほかのグループにもいるのが、ドラフト生だけの特権。1週間前にAKBのドラフト2期生の4人が正規メンバーに昇格した時も、ドラフト2期生のグループLINEはお祝いで超盛り上がったんですよ。おかげで、同期生を通じて、ほかのグループの大先輩たちとも親しくなりやすいですし、いいことがいっぱいなんです」。

 荻野の同期で、同じく千葉から福岡のHKT48へ行った松岡はな(17)も、昨年からグループのセンターに抜てきされた。AKBの久保怜音(13)らも将来のエースと嘱望されている。注目度が高いこともあり、ドラフト生の成長は、ほかに比べても目覚ましい。

 「ぜひ、NGTにも来てください。同じドラフト出身の私は、一緒に踊るのをすごく楽しみにしています!」。

 荻野は、天真らんまんな笑顔で、未来のアイドルたちにエールを送っていた。