マーゴット・ロビーは「悪役願望」が人一倍強いようだ。3年前に「アイ トーニャ 史上最大のスキャンダル」でフィギュアスケートの「悪玉」トーニャ・ハーディングを演じ、今回は「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」(20日公開)でアメコミきっての悪女になりきった。両作共に製作にも関わり、進んで「悪」の世界に踏み込んでいる。

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(マーティン・スコセッシ監督)でレオナルド・ディカプリオの妻役を演じて注目されてから7年。29歳にしてこの姿勢は貴重なのではないか。

「バットマン」シリーズでおなじみのゴッサムシティが舞台。悪のカリスマ、ジョーカーの恋人だったハーレイ・クインは彼に捨てられ、後ろ盾を失った途端に、それまでのやりたい放題がたたって街中の悪党から目の敵にされてしまう。モラルゼロの彼女の心の底には秘めた優しさがあり、紆余(うよ)曲折の末にくせ者女子ばかりの「最凶チーム」を結成。街を牛耳るブラックマスクとの戦いが繰り広げられる。

誰もがホアキン・フェニックスの「ジョーカー」を頭に浮かべると思うが、心奥をまさぐるようなあの作品とは対照的に、徹底的にハジけている。「ジョーカー」で落ち込んだ気持ちを晴らすようなアッパーな作品だ。

全身を使ったアクション、バットを主体とした複雑な殺陣をスムーズにこなすロビーには鍛錬の跡がうかがえる。クレイジーな中に元精神科医の冷静さをのぞかせ、残酷な中に意外な優しさをのぞかせる。彼女の目と口の動きから、そんな機微が伝わってくる。この役へのこだわりと理解の深さを実感する。

ハーレイのこれまでをさらっとアニメーションにまとめ、彼女と行動を共にすることになるスリの少女、女はぐれ刑事、薄幸の歌姫、謎の女殺し屋。クリスティーナ・ホドソン脚本、キャシー・ヤン監督のコンビは、登場人物それぞれの過去を巧みに織り込みながら1時間49分にまとめあげている。

ユアン・マクレガーふんする敵役を含め、多くのキャラを立てながらゴチャつき感はなく、すっきりと楽しめる。

マーベルのヒーローたちは、ディズニーのもとで「アベンジャーズ」として体系的にまとめられ、コース料理のように提供されている。対して「バットマン」に代表されるDCコミックスのキャラクターは、作品ごとに微妙にテイストが違い、ありていに言えばまとまりがない。が、そんなアラカルト的提供も嫌いではない。今作もさらっと単発で味わう1本だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)