東京調布市の住宅街で起きた大規模な道路陥没は一昨年のことだから、まだ記憶に新しい。隣国韓国に目を転じれば、都市部を中心に実に年間900件ものシンクホール(陥没孔)が発生しているという。

「奈落のマイホーム」(11月11日公開)は、自宅マンションをシンクホールにのみ込まれてしまった人たちの脱出劇を描いている。

洋画をよく観るようになった高校時代が、「タワーリング・インフェルノ」や「ポセイドン・アドベンチャー」といったディザスター・ムービーが相次いで大ヒットした70年代に重なったこともあり、「パニック映画」と呼ばれたこのジャンルには人一倍親しみがある。高層ビル火災や巨大客船の沈没に比べれば、小ぶりなマンションの陥没か-と正直高をくくってこの作品に臨んだが、パニック・レベルは想像以上だった。

平凡なサラリーマンのドンウォン(キム・ソンギュン)は節約を重ねた末にソウル市内にマンションを購入する。妻と息子。幸せなマイホーム生活が始まるはずだった。

が、息子のビー玉が床を転がるのを見てかすかな不安が…そして、同僚を招いた引っ越しパーティーの翌朝、地響きに続いてマンションの沈没が始まった。

パーティーで酔いつぶれてしまった同僚やそれぞれの事情で自室に残っていた住人たちは建物ごと地下に引きずり込まれていく。

陥没孔は地下500メートル以上。半壊しながら落下した建物はいびつな形状になっている。住人たちが引き込まれた現場の立体的な「迷路構造」には新味がある。周囲の建造物の一部が上から落ちてきたり、湧き上がる地下水も不気味に迫る。脱出への道すじは従来作品からはなかなか想像しにくい。

「ザ・タワー 超高層ビル火災」(12年)のキム・ジフン監督はこの種の作品の手腕を実証済みで、セットやCGのクオリティーは高い。さらに、きめ細かいエピソードで登場人物たちの個性を浮かび上がらせながら、人情物語がほどよく織り込まれている。

リアルにサラリーマンの「平凡」を演じきったソンギュンの他、クセの強い隣人のチャ・スンウォン、何かといさかいを起こす同僚役のイ・ヴァンスとメイン3人に巧者がそろい。泥まみれの熱演が「陥没パニック」をひりひりと伝える。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)