リーアム・ニーソンが101本目の出演作で演じたのはやり手の金融マンだ。「96時間」(08年)以来、この人のイメージとなった「元軍人」や「元警察官」としての戦闘スキルを持ち合わせているわけではない。

「バッド・デイ・ドライブ」(ニムロッド・アーントル監督、12月1日公開)は、そんなノンスキルの一般市民が、爆弾テロに立ち向かう物語だ。金融マンの機知や想像以上の対応能力もニーソンが演じるから説得力がある。

ドイツ・ベルリンの朝。慌ただしく仕事に向かうマット(ニーソン)は、妻のひと言で2人の子どもを学校に送る約束を思い出す。家庭をなおざりにしていた報いで、膨れっ面の2人と気まずいドライブを始めた直後に着信が。

「車に爆弾を仕掛けた。降りたり、通報すれば即座に爆破する」

要求は不明。いぶかりながら車を走らせると、行く先々で爆発が起き、会社の同僚が次々と犠牲になる。ユーロポールが動き出し、マットはいつの間にか容疑者として追われることになる。妻と連絡を取ろうとすると、彼女は離婚弁護士の元にいるという。マットは子どもたちを危機から救い、家族の信頼を取り戻すことができるのか…。

「アンノウン」「フライト・ゲーム」「トレイン・ミッション」と空や列車という特殊な空間でニーソンを危機的状況に追い込んできたアンドリュー・ローナ=アレックス・ハイネマンのプロデューサーコンビは、通勤途中の車を舞台に新味を出す。優先順位を間違えてしまった中年男の再生物語を重ねていることが厚みとなっている。

車の中の狭い空間で、マットや子どもたちの表情、シート下に仕掛けられた爆弾の詳細まで映し出すカメラワークに工夫がある。米国生まれのマットはベルリンに移り住んで間もないという設定で、慣れない街並みへの不安感も緊張を高める。

テロ犯の通信状況の把握ぶりやユーロポールとのやりとりで、この男ならこの危機を脱出できるかもしれないと思わせてくれるのはニーソンだからだろう。そして、終盤では、やっぱりニーソン的なアクションも披露してくれる。

71歳。まだまだ現役だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)