生き別れた兄弟が田舎町の吹奏楽団で出会う。世界的指揮者の兄は、炭坑の楽団でトロンボーンを吹く弟に音楽の才能を見いだして…。「ファンファーレ!ふたつの音」(19日公開)は、仏セザール賞7部門ノミネートのヒューマンドラマだ。60代で脚光を浴びる遅咲き、フランスのエマニュエル・クールコル監督(67)にオンラインで聞いた。
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-前作「アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台」では刑務所で囚人たちに演技を教える俳優の奮闘を描きました。毎回ユニークな題材選びの基準はどこに置いていますか
「相反するものを調和させ、妥協点やバランスを見つけることが好きなんですね。今回の兄弟は血がつながっていても育った環境や文化は正反対です。エリート指揮者と炭坑の街で育った音楽好きの青年です。最初は反発し合う彼らが見えない絆によってそれぞれ影響を受け、やがて進むべき道を見つける。そういう関係から人間くさいドラマが生まれるのだと思っています」
-兄役のバンジャマン・ラヴェルネは2カ月半、プロの指揮者について学んだそうですし、もともとピアノが得意だった弟役のピエール・ロダンもトロンボーンを3カ月特訓したと聞きます。2人がピアノ連弾する心打つシーンにも「本物」を感じました。音楽漬けの役作りを超えて、伸び伸びと演じているように見えます
「どんな局面でも役者たちが自信を持って演じられるように心掛けています。選んだのは僕であり、責任は僕にあるのだから、あなた方は思いのままにやりなさい、と。それから時間をふんだんに使うことですね。納得するまで話し合い、互いに納得するまでテイクを重ねます。出演者がストレスを感じないようにすることがたいせつです。僕はもともと役者ですから、自分がやりやすかった環境を作ろうという思いがあります」
-俳優からスタートした監督が、脚本家、そして監督になったいきさつを教えてください
「もともとは法律家を目指していました。一方で、舞台への憧れがあって、記念のつもりで国立高等演劇学校を受けたら、たまたま受かってしまったというのが俳優になったきっかけです。で、もともとクリエーティブなことに興味があり、監督のフィリップ・リオレと出会って脚本を書くようになったんです。書いているうちに出来上がった作品と自分のイメージの違いを感じるようになり、それなら自分でメガホンを取ろう、と。なりゆきまかせなんです」
-映画の背景となる労使紛争や工場閉鎖などはフランスの現状を反映しているのですか
「それは意図的にやっています。ある意味ドキュメンタリーとして撮ったという自覚もあります。シナリオを書くに当たって産業空洞化が進む北部を入念に取材しました。荒廃が進む中での楽団という存在の大きさも。兄弟の物語はセンチメンタルですが、背景は可能な限りリアルにと。実際にストライキ中の工場の前をロケ隊が通過したときには連帯を示すクラクションを鳴らしたくらいです」
-兄はクラシック界のスター指揮者であり、弟はジャズをこよなく愛している。対して、炭坑の楽団をつぶそうとする、いわば悪者の市長はカントリー好き。そんな割り振りに監督の音楽の好みがうかがえます
「確かにクラシックもジャズも大好きで、別にカントリーを憎んでいるわけではないですけど、それほど好きではありません(笑い)フランスではかなり前からジャズは親しまれてきたし、もちろんクラシック音楽はそれ以前から根付いています。比べてカントリーにはまだなじみが薄く、アメリカ音楽に侵食されているような気分になります。まあ、それへのレジスタンスという意識があったのかもしれませんね」
-ご自身シネフィル(映画狂)とおっしゃってますが、映画の魅力とは
「自分では生きられなかった人生を2時間で疑似体験させてくれるもの。現実から離れて夢を見させてくれるもの。心のバランスを取り戻して生きる力を与えてくれるものですね」
【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)
◆エマニュエル・クールコル 1957年12月25日生まれ。01年フィリップ・リオレ監督「マドモアゼル」で脚本を担当。「アルゴンヌ戦の落としもの」(18年)で長編映画初監督。「アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台」は20年のカンヌ映画祭に公式出品された。




