2021年の芸能界でブレークしたり、バズる「急上昇」候補は－。日刊スポーツが注目する新星たちを「2021年『急上昇！』」と題し、随時掲載でお届けします。

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シンガー・ソングライターにゃんぞぬデシ（22）が22日、約2年ぶりのデジタルシングル「風とイルカと恋」をリリースした。温かくて懐かしさを感じるサウンド、世界観にマッチしたミュージックビデオが好評だ。透き通るような歌声や美しいメロディーラインの楽曲作りが人気のにゃんぞぬデシだが、独特なキャラクターにも注目が集まる。後編では、その魅力に迫る。

初恋を歌った楽曲ということで、自身の理想の恋について問うと「うー！」と慌てた様子で奇声をあげ、顔を机に突っ伏した。「理想の恋…理想の恋かー…」と顔を上げると宙をみながら「いろいろイメージしていることはあるんですけど、いつもイメージだけで現実にならない。結構、考察しちゃうんです。客観的にみてしまう。恋愛というのは客観的に見てはいけないと思う。そこを直さないといけないなっていう…」。新曲で表現されている切ない初恋の世界観からは想像もできない答えに驚かされた。

趣味は散歩。「散歩は長い時間しますね。（午後）2時に家でたとしたら、夕方に帰ってこようと思っていたら（午後）9時くらいになっていたり。公園のベンチが好きなので時々休んで、曲、歌詞を考えたりします」。

周囲の人々や大好きな映画を観て、主人公になりきったりして妄想をふくらませるのも好きだ。「この人は恋愛したらどうなるんだろうなとか、老後どういう性格かな、あんまり口聞かなくなるのかなとか。自由じゃないですか」と笑った。実体験だけに頼らない妄想力と、外の世界で得るインスピレーションが楽曲作りの源のようだ。

音楽への目覚めは小5の時。マイケル・ジャクソンさんの「THIS IS IT」だった。「こんなときめき、ワクワクするような心を与えられるような人になりたいなって」と振り返った。小6からラジオにのめり込み、平井堅や星野源、ピストン西沢、クリープハイプ尾崎世界観らからも影響を受けた。

楽曲制作を始めたのは、「HARD・OFF」で中古のエレキギターを購入した中学3年の時から。「電子機器をもっていなかったので、エレキとアコギ（アコースティックギター）違いがわからなかったんです。音があんまり鳴らないなって（笑い）」と戸惑いつつ、学校の「情報」の授業中にパソコンで調べ、アンプを買い足した。

ギターは「BOOK OFF」で購入した「Go！　Go！　はじめてのアコギ」という教習本を読み独学で習得。授業中は定規をギターのフレットに見立てて机の中で指の位置を覚える練習をするほどのめりこんだ。作曲についても特に学ぶことなく我流で上達した。「ラジカセにカセットテープを入れて、好きなラジオを録音したり、曲を録音したり、コンテストに応募するデモテープを本当にデモテープの状態で、カセットテープで自分のギターを録音してやっていたんです」。

中高は美術部だったが、高2の時に、先輩に誘われてライブハウスで弾き語りを披露した。たまたま忘れ物を取りに来た音楽関係者の目に留まり、その後の活動拠点となる「mona records」というライブハウスを紹介された。ついにライブ活動を本格化させた。

音楽への情熱は増すばかりだ。「私は音楽に救われてきた。薬のように音楽を聴いてきた。私も誰かの薬になるような音楽を作りたいな」。ただ「これは薬です」と押しつけるのではなく、聴いた人にそれぞれの受け止め方をしてもらうのが理想だという。

自身はネガティブな一面があるといい「私と同じようなネガティブな感じの景色を見ている人にも『それでも大丈夫だよ』って言っていきたい。そういう方々に聞いていただきたいです」と優しく呼び掛けた。

目標は映画の主題歌を担当することと、「ROCk IN JAPAN FESTIVAL」のグラスステージに7年連続で立つこと。高3の時に、「ROCK IN」本戦出場の権利をかけて戦う「RO JACK」で敗れた経験から目標に定めたという。22歳とは思えない独特な下積み時代の経験を糧に、大きな夢に向けて歌い続ける。

◆にゃんぞぬデシ　本名非公表。1998年（平10）8月4日、福島県生まれ。飼い猫の「にゃんぞう」を尊敬し、弟子になるという意味で同歌手名に。中学生からへそくりで買ったギターで楽曲制作を開始。高2からライブ活動をスタートし、16年「mona recordsレーベルオーディション」でグランプリを獲得。同年、ミニアルバム「はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。」でCDデビュー。18年ミニアルバム「魔法が使えたみたいだった」、19年デジタルシングル「勘違い心拍数」など。