世界を震撼させた米同時多発テロが起きた2001年9月11日から20周年を迎えた今年、事件をきっかけに始まったアフガニスタン戦争が終結。駐留米軍が完全撤退し、20年近くに及んだ米史上最長の戦争に終止符が打たれました。

史上最悪のテロ事件となった9・11は、民間機4機がハイジャックされ、2機がニューヨークの世界貿易センタービルに激突し、残る2機のうち1機はバージニア州アーリントンにある国防総省本庁舎(ペンタゴン)に衝突。最後の1機はペンシルベニア州シャンクスビルの野原に墜落し、日本人24人を含む2977人が犠牲になりました。

米同時多発テロから20周年を振り返るCNNの特集記事(CNNのサイトより)
米同時多発テロから20周年を振り返るCNNの特集記事(CNNのサイトより)

ハリウッドではこの20年、9・11やその後のアフガン戦争などこの事件にまつわる様々な出来事を描いた映画を制作しています。あの日何があったのか知らない世代も増えていますが、なぜテロが起きたのか、事件をきっかけに世の中がどう変わったのか、テロの危機が身近になった今こそ改めて映画を見ながら9・11を振り返ってみてはどうでしょう。20周年を機に改めて見るべき9・11を描いた映画を紹介します。

「ユナイテッド93」(2006年)

9・11から5年がたった2006年に、初めてこの事件を直接的に描くハリウッド映画が2本公開され、そのうちの1本が、ハイジャックされた4機のうち唯一目標に到達せずに墜落したユナイテッド航空93便を描いたものでした。この日、テロリスト4人を含む乗員・乗客44人を乗せたユナイテッド航空93便で何が起きていたのか、離陸からハイジャックされ、運命の瞬間を迎えるまでの機内で起きた出来事を再構築し、臨場感たっぷりに描いた衝撃的な作品です。

「ワールド・トレード・センター」(2006年)

9・11から5年後に公開されたもう1本は、テロの標的となった世界貿易センタービルを舞台に救助活動に当たった警察官を描いた実話です。オリバー・ストーン監督がメガホンをとり、ビルの崩壊で生き埋めになった現場から奇跡的に生還した警察官をニコラス・ケイジが演じています。リアリティーにこだわった迫力ある映像と人間ドラマが、命の大切さを改めて教えてくれます。

「ナインイレヴン 運命を分けた日」(2017年)

最初に攻撃を受けた世界貿易センタービル北棟のエレベーターに閉じ込められた男女5人をチャーリー・シーンら豪華キャストが演じた群像劇。偶然エレベーターに居合わせた5人は、飛行機の衝突でエレベーター内に閉じ込められ、オペレーターの女性との通信だけが外部との唯一のつながりという極限状態の中、脱出の道を模索する5人の運命が描かれています。

「9/11:その時、司令本部で何がおきていたのか」(2021年)

当時の米大統領だったジョージ・W・ブッシュ氏とチェイニー元副大統領ら側近のインタビューを交え、あの日司令本部で何が起きていたのかを描くドキュメンタリーは、Apple TV+で配信中です。テロ当日の大統領の実際の映像を織り交ぜながら、当時の混乱と緊迫、恐怖を政府の視点からあぶり出しています。

「華氏911」(2004年)

アポなし突撃取材で知られるマイケル・ムーア監督による9・11を題材にしたドキュメンタリーは、イラク戦争を主導したブッシュ政権を批判した反ブッシュ映画です。9・11のその後や、なぜ無関係のイラク侵攻が行われたのか、米同時多発テロを首謀した国際テロ組織アルカイダ指導者ウサマ・ビン・ラディン容疑者の一族とブッシュ家の関係など、ブッシュ政権の内幕を暴く作品になっています。

「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012年)

テロの首謀者ビン・ラディン容疑者の殺害計画を描いた実話も映画化されています。メガホンを取ったのは「ハート・ロッカー」(08年)で女性として初めてアカデミー賞監督賞を受賞したキャサリン・ビグロー監督で、主人公のCIA女性分析官の視点から、9・11から10年後の2011年にビン・ラディン容疑者が射殺された奇襲作戦までが描かれています。10年間容疑者を追い続けた分析官の執念を関係者の証言を基に克明に描き、同容疑者殺害に至るまでの真実が明かされています。

「11’09’’01/セプテンバー11」(2002年)

世界各国の11人の映画監督が、それぞれの視点から9・11をテーマに描いた短編映画のオムニバス。アメリカからは俳優でもあるショーン・ペン、メキシコからは「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(14年)と「レヴェナント:蘇えりし者」(15年)でアカデミー賞監督賞を受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が名を連ねるなどそうそうたる顔ぶれが集まり、日本からも今村昌平監督が参加しています。9・11をテーマに、11分9秒01の長さの作品を11人の監督が撮るというユニークな試みは、9・11というあの日の出来事を異なる民族の視点、角度から見て感じることができます。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)